礼真琴演じる柳生十兵衛の立ち回りが凄い!山田風太郎の人気小説を舞台化した作品『柳生忍法帖』

礼真琴
礼真琴

2021年に星組にて上演された『柳生忍法帖』は、山田風太郎の人気小説を舞台化した作品だ。剣豪・柳生十兵衛の助けを借りながら、女たちが仇討ちを果たすというストーリーである。原作には残虐な殺戮や過激な描写も多いが、演出の大野拓史は、「清く正しく美しく」に相応しからぬ要素を見事に抜き取り、明るく健全なタカラヅカ版『柳生忍法帖』としてまとめ上げた。ストーリー展開はあくまで原作に忠実で、テンポよく進むのが小気味良い。

舞空瞳
舞空瞳

原作/山田 風太郎「柳生忍法帖」(KADOKAWA 角川文庫刊)©宝塚歌劇団  ©宝塚クリエイティブアーツ

江戸時代の初期、会津藩は女色に耽る暗愚な藩主に支配されていた。これを見限って出奔した堀主水ら忠臣たちは、「会津七本槍」に捕縛され処刑される。さらに「七本槍」は、残された女たちを匿う尼寺・東慶寺にまで押入る。

堀一族の7人の女たちは夫や父の仇を打つことを誓い、この様子を見た千姫は仇討ちを彼女たちだけの力でやり遂げさせようと決意する。千姫の相談を受けた沢庵和尚が女たちの指南役として推薦したのが、隻眼の天才剣士・柳生十兵衛(礼真琴)だった。

実は会津藩を背後で操るのは、かつて会津を支配した芦名一族の末裔で、107歳ともいわれる芦名銅伯(愛月ひかる)だった。銅伯は会津を取り戻すべく、精鋭「会津七本槍」を従え、娘のゆら(舞空瞳)を藩主の寵姫としていたのだ。

愛月ひかる
愛月ひかる

原作/山田 風太郎「柳生忍法帖」(KADOKAWA 角川文庫刊)©宝塚歌劇団  ©宝塚クリエイティブアーツ

7人の女たちは十兵衛や沢庵に助けられながら「七本槍」を順に倒していった。そして、銅伯との対決の時が迫る...。

主人公の柳生十兵衛を演じるのが、星組トップスターの礼真琴だ。圧倒的な強さを誇る武芸者でありながらも、無頼に生きる自由人であり、いつも冷静沈着でありながらも、どこか温かみがあってユーモラスなところもある。そんな緩急自在さを合わせ持った十兵衛のキャラクターが、礼真琴によく似合う。激しい立ち回りをこなしたかと思えば、朗々とした歌声を響かせる。

敵対する立場にありながら、十兵衛に一目惚れする妖姫ゆらを、トップ娘役の舞空瞳が演じる。その豹変の過程は原作小説ではやや唐突なのだが、舞台では意外な説得力を感じさせる。最後にゆらに向けて捧げられる十兵衛のセリフが舞台でも踏襲され、何ともタカラヅカらしい終わり方となっている。

十兵衛と対峙する会津藩の陰の支配者・芦名銅伯と、幕府の高僧・天海の2役を演じるのが、本公演で退団した愛月ひかるだ。愛月ひかるといえば白い役から黒い役まで、演じてきた役の振れ幅において右に出るものはいないと言っていいくらいだ。その経験を活かした銅伯像を作り上げ、「滅びの美学」を表現してみせた。天海との演じ分けも舞台ならではの趣向だ。

星組期待の男役が勢ぞろいする「会津七本槍」は、いわば悪の「戦隊ヒーロー」といったところ。衣装や髪型もそれぞれ個性的で、見比べるのも楽しい。彼らが悪ガキの如く暴れ回る姿は爽快でさえある。
 
この「七本槍」を、可憐な娘役たちが勇ましい出立ちでなぎ倒していく。とにかくこの作品は女性が強いのが気持ちいい。女たちを助け、十兵衛を導く沢庵和尚(天寿光希)の飄々とした振る舞いは、戦いのシーンが続く中での癒しだ。

鷲ノ巣廉助(綺城ひか理)の拳法や平賀孫兵衛(天華えま)の槍など、それぞれの得意技を披露する立ち回りも見せ場だ。七本槍のリーダー格・漆戸虹七郎(瀬央ゆりあ)と十兵衛との最後の対決は迫真に迫る。

十兵衛による奇策の展開や、スピーディな立ち回りなど、細かい見どころも多い。スカイ・ステージで改めてチェックしてみたいと思う。

文=中本千晶

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放送情報

柳生忍法帖('21年星組・東京・千秋楽)
放送日時:2022年12月4日(日)21:00~ほか
チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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