ドイツ ブンデスリーガは、欧州トップクラブを目指す若手選手たちの登竜門だ。もはや説明不要の大物ストライカーとなったアーリン・ホーラン(ドルトムント)のように、着実なステップアップを目指す将来有望な選手たちが、ドイツの地に集まっている。ブンデスリーガの再開を迎えるにあたって、2021年の東京五輪を経て3年後にビッグクラブで活躍していると予想される選手たちを見ていこう。
■基準は...?
ここで用いた選手の選考基準は、次の通り:
1.18-19年および19-20年デビュー
2.デビュー年以降の出場試合数
3.東京五輪世代より若い(1997年以降生まれ)
4.再開時点でブンデスリーガ1部および2部でプレー
5.推定移籍金の金額(市場価格)
プレーそのものを見て選手を評価するのはもちろんだが、これからの成長の可能性を見ていくときに、市場価格の変動を追うのも有効だ。将来性(年齢)、パフォーマンス、人間性(ネガティブなニュース)、人気・露出などの要素が組み合わさって、選手の評価が価格という形で可視化されるからだ。そのため、ここではドイツのオンラインポータル『トランスファーマルクト』を参考に選手を選出していこう。
このポータルサイトは、『キッカー』、ブンデスリーガ公式サイトと並び、ドイツ最大のサッカーサイトのひとつだ。ドイツ最大の日刊紙『ビルト』を発行するアクセル・シュプリンガー社が株の大半を所有しており、記事にもこのサイトの推定市場価格が引用される。ドイツ国内では、選手の評価を知る上で欠かせないサイトとなっている。
さっそく、選手を紹介していこう。
1.ドルトムント
ジョバンニ・レイナ(17歳/U-17アメリカ代表)
推定市場価格:1350万ユーロ(約16億円)
父親のクラウディオ・レイナも、サッカー選手としてドイツやイングランド、そして米国代表でプレーしたサラブレッドだ。2020年1月18日、第18節のアウクスブルクの敵地でデビュー。17歳2ヶ月5日でのデビューは、ブンデスリーガ史上5番目の若さだ。その後は、途中出場ながら毎試合出場。俊敏なドリブラーながら、ドイツカップのブレーメン戦でプロ初得点、UEFAチャンピオンズリーグのパリサンジェルマン戦ファーストレグでは決勝点に繋がるアシストをするなど、数字も付いてきている。
1億ユーロ(約120億円)での移籍が見込まれているジェイドン・サンチョの跡を埋める存在だ。
2.ライプツィヒ
ノルディ・ミュキェレ(22歳/U-21フランス代表)
推定市場価格:2000万ユーロ(約24億円)
ライプツィヒで存在感を放つのは、ミュキェレとエンクンクのU-21フランス代表コンビだ。主に右サイドバックを主戦場とするミュキェレは、身体能力とスピードを買われて獲得されたものの、昨季は遅刻など規律面で問題を抱えていた。昨季終盤にスタッフからの信頼を獲得すると、今季も安定したパフォーマンスを見せるようになった。
クリストファー・エンクンク(22歳/U-21フランス代表)
推定市場価格:2800万ユーロ(約34億円)
今季1300万ユーロ(約15億円)でパリサンジェルマンからやって来たエンクンクは、抜群のテクニック、豊富な運動量、そしてトーマス・トゥヘル仕込みのポジショニングで、すぐさまナーゲルスマン監督の元でポジションを掴む。現時点ですでに4得点12アシスト。今後、UEFAチャンピオンズリーグでコンスタントに顔を見ることになる選手だ。
3.レバークーゼン
ムサ・ディアビ(20歳/U-21フランス代表)
推定市場価格:2700万ユーロ(約32億円)
スピード感あふれるプレーで存在感を放つのが、今季パリサンジェルマンからやって来たムサ・ディアビだ。パリでも優れた突破を見せていたものの、ネイマールやムバッペのスター選手の影に隠れてしまっていた。この半年の活躍で、市場価格は倍以上になった。今、リーグで最もノッている選手の一人だ。
パウリーニョ(19歳/U-21ブラジル代表)
推定市場価格:1350万ユーロ(約16億円)
レバークーゼンのサイドアタッカーとして、ディアビとパウリーニョはしのぎを削っている。昨季、1850万ユーロ(約22億円)でブラジルのバスコ・ダ・ガマからやって来たパウリーニョだが、いまひとつ自分の特徴を活かしきれていない。今季もわずか7試合の出場に留まっている。中断直前のフランクフルト戦では2得点1アシストの大活躍を見せた。ここからの巻き返しに期待したい。
4.メンヘングラートバッハ
フロリアン・ノイハウス(23歳/U-21ドイツ代表)
推定市場価格:1750万ユーロ(約20億円)
東京五輪にドイツ代表として乗り込むであろう、フロリアン・ノイハウスはメンヘングラートバッハでも不動のレギュラーだ。2季前には、レンタル先のデュッセルドルフで2部を戦い、若干21歳ながら重圧をものともせずに中盤の主軸として活躍。原口元気や宇佐美貴史らと昇格に貢献した。
自身のクラブに復帰後は、豊富な運動量、クレバーなパスの配給や味方へのサポートを武器に、"水を運ぶ人"としてチームにとって欠かせない存在となっている。
5.フランクフルト
エバン・エンディカ(20歳/U-21フランス代表)
推定市場価格:2250万ユーロ(約26億円)
昨季、550万ユーロ(約6億円)でフランス2部のオセールからやって来たエンディカは、開幕から3バックの一角として定着。リベロとして君臨した長谷部誠の両脇を固めた一人だ。左利きで、ボールの扱いにもソツがない。192センチの長身を活かした空中戦の強さはもちろん、アジリティ能力も高い。センターバックとしての評価は、この1年の活躍で5倍以上も上昇した。
4バックを導入した今季は、一時期ポジションを失ったものの、左サイドバックとして活路を見出した。後期は左サイドバックとして定着し、プレーの幅を広げている。
6.ヘルタベルリン
マテウス・クーニャ(20歳/U-23ブラジル代表)
推定市場価格:1350万ユーロ(約15億円)
昨季、スイス1部のシオンから1500万ユーロ(約17億円)でライプツィヒにやって来た。創造性あふれるプレーで才能の片鱗を見せていたものの、なかなかブレークスルーを果たせずにいた。今年の冬、投資家のラース・ヴィンドホルストが経営陣に参入し、大型補強を敢行したヘルタベルリンから1800万ユーロ(約21億円)のオファーを受けて移籍した。
スタメンの座を確約されると、ヘルタでは4試合出場2得点1アシストと結果を出している。1月の東京五輪南米予選では、センターフォワードとして得点を重ね、ブラジルを予選突破に導いた。
7.マインツ
ジャン・フィリップ・マテタ(22歳/U-21フランス代表)
推定市場価格:1750万ユーロ(約20億円)
マインツの期待の若手は、消化不良のシーズンを過ごしている。昨季、リヨンから800万ユーロ(約9億円)でやって来た大型ストライカーのマテタは、全試合に出場。強靭な身体能力とスピードを活かして14得点3アシストの活躍で、チームを早々に残留へと導いた。
今季はさらなる上積みを狙うはずだったが、半月板を損傷し、前期をほぼ棒に振ってしまう。第15節から復帰したものの、チームは降格圏とわずか勝ち点1差の15位。監督交代も重なり、リズムを掴めないでいた。コロナ禍による中断が、追い風となるか。
8.ブレーメン
ジョシュ・サージェント(20歳/アメリカ代表)
推定市場価格:670万ユーロ(約8億円)
思いもよらぬ残留争いに苦しんでいるのが、ブレーメンだ。そんな中、昨季、トップチームに引き上げられ、デビュー戦でゴールを決めたサージェントは徐々に出場時間を伸ばしている。すでに米国A代表としても得点を重ねており、順調な成長を見せている。パスワークのなかでのポストプレーが安定すれば、大迫勇也からポジションを奪ってしまうことも考えられる。
残留争いの真っ只中で、降格もチラつく状況だが、仮に2部に落ちても、ブレーメンはこのストライカーを売る気は無いという。長期的な構想に入っており、しばらくドイツの舞台で姿を見ることになりそうだ。
9.パーダーボルン
ルカ・キリアン(20歳/U-21ドイツ代表)
推定市場価格:130万ユーロ(1億5000万円)
ドルトムントの生え抜きで、昨季はドルトムントU-23チームで4部を戦っていたルカ・キリアン。今季は移籍金無しで昇格チームのパーダーボルンに移籍。第6節のデビュー戦でバイエルン相手に堂々としたプレーを見せると、19節に怪我で戦列を離れるまで、定位置の座を掴み取った。
ブンデスリーガでコロナウイルスに感染した最初の選手となってしまったが、無事に快復した。中断期間も怪我の回復に費やすことができ、復帰に向けて準備を進めている。噂に過ぎないとは言え、ラングニックがミランに連れてくるとも言われている。これまで"無名"だったセンターバックが、欧州の舞台で見られる日も遠くはないようだ。
文=鈴木達朗
放送情報
「19/20 ドイツ ブンデスリーガ」
【19/20シーズン】全306試合放送!
チャンネル:スポーツライブ+ 他
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