振付家・ダンサー・俳優の北尾亘がダンスに懸ける思いを語る「ダンスを通して人と出会う機会をもっともっとたくさん作り続けていきたい」
- 文化人・その他
- 2023.07.07
――「Baobab」はダンスであり演劇のようでもありますが、ダンスと演劇の違いをどのように捉えていますか?
「どちらも変化し続けているものですし、僕の思考も変化し続けているのですが、今のところ演劇というのは、歴史背景や人間の生き方や、思想、考え方など、そういったものにダイレクトに影響を及ぼし得る表現だと思っています。一方で、日本人は体で感情表現をしたり、街中でいきなり踊り出したりとか、そういうことと少し縁遠い国民性だと思うので、ダンスはちょっと非日常的、二次的なものだと感じています。だから、ダンスを用いて観客の琴線に触れることなどは少し難しいですが、演劇は観る人の発想などにダイレクトに影響を及ぼし得る表現なんじゃないかな、というふうに感じています。
僕は人の人生にタッチする、社会の何かに触れていくことをダンスでも起こせないかと、年々強く思うようになり、演劇的な要素のセリフを喋ってみたり、体の感情表現だけでなく、顔で表現したりします。踊ることは、自分の中で運動を起こして循環したときに生まれる感情を表現の上で蓋をしてしまうことが多いと思うんですね。これはジャンルの型、技術的なものや見栄えとかで制限されてしまう。これらを解き放って表現に作り変えようとしているからこそ、演劇的な要素を取り扱いたくなのるかと思います」
――初めて観る方々に最初に見てほしい作品、楽しみ方を教えていただけますか?
「できれば最新作を観ていただくことが、一番じゃないかな。時代に呼応して、時代の中で変化する体に意識を向け、社会とか人々の声と自分自身の内声を聞きながら作品作りをしているつもりなので、その都度フレッシュな表現、あるいは最新の体の声が作品に立ち上がっていると思います。もちろん、劇場に足を運んでいただけたら嬉しいですし、そうでなくとも、これまでの過去作品もウェブ上には載せているので、その遍歴も観てもらえると嬉しいです」
――これまで数々の賞を受賞されていますが、どのようなところを心がけて来られたのでしょうか?
「ヒップホップカルチャーに幼い時からどっぷり触れていた経験もあるので、ヒップホップやストリートダンスとの馴染みが一番良かったですね。この自由の幅のあるコンテンポラリーダンスのジャンルに飛び込んだ時に、周りを見渡してもあまりそういうことを取り扱っているダンサーが多くなく、気の赴くままにそういう要素を作品の中に盛り込んできました。
具体的には、音楽の選曲や音楽と体の呼応のさせ方、音取りとかリズム取りですね。クラシックバレエの成り立ちって、西洋的な上に向かっていく体の使い方、天や空を目指すような使い方が多いのに対し、ブラックカルチャーは地面を踏み鳴らし、地面に向けてのエネルギーの発散の仕方がある。そういった、地面を感じるとか、裸足で踊るという特性の部分に強い興味を持って創作に当たっていました。空間性についてもそうで、劇場空間の扱い方、複数人のグループ作品、群舞作品の場合のポジショニング、構図、その変化のさせ方とか、そういうところを意識してきました。
新しいムーブメントとか新しい構図や配置といった"まだ見たことのないものを求めてその空間を設計していく"ということにすごく重点を置いているので、わざわざアシンメトリーな形にダンサーを配置したり、観客席とは違う方向に体を向けて身体の立体感を演出したりしています。そういう意味で、(特定の場所や空間と結びつくことで成立する)サイトスペシフィックな作りとか空間作りということも心がけています」
放送情報
ART & CULTURE ~ 今を生きる表現者たち 振付家・ダンサー・俳優:北尾亘
放送日時:2023年7月12日(水)2:50〜
2023年7月17日(月)3:50~
2023年7月20日(木)3:50~ 他
チャンネル:スポーツライブ+ 他
※放送スケジュールは変更になる場合があります
【配信情報】
ART & CULTURE ~ 今を生きる表現者たち 振付家・ダンサー・俳優:北尾亘
配信日時:2023年7月7日(金)12:00〜12月31日(日)
https://spoox.skyperfectv.co.jp/static/sales/content/art-culture/
【公演情報】
Baobab第15回本公演Re:born project vol.7+8『ボレロ -或いは、熱狂。』
7月21日(金)〜23日(日):シアタートラム
Baobab:https://dd-baobab-bb.boo.jp/index.html
制作協力
アーツコミッション・ヨコハマ
https://acy.yafjp.org/
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