押切蓮介が描いた「サユリ」を映画監督・白石晃士が映画化へ。押切「自由にやってほしいっていう気持ちもあったんですけど...」

――ロケ地の家はかなりのリサーチをもとに決められましたか?

白石「制作部に探し回ってもらって、相当探し回った末に見つけた家です。なかなか物件内容に合致するものが見つからず、最後の最後にやっとたどり着いた家でした。あの伊東の地にみんなで宿泊して撮影しました。周囲のロケーションも含めて、あの家はちょっと脚本を変えないといけない部分もありましたが、あの吹き抜けがむしろ利用できると思えたので、ただ単に内容を家に合わせるのではなく、家の個性を活かして新しいアイディアに繋げることができました。この家なら何とかなると確信して決めましたが、相当難航しました。」

押切「売り物件だったらしいので買おうかなってグッときましたけど、住むのは怖いなって。やっぱり恐ろしいですね。周りもなんもないし、空き家ばっかりでハチの巣が出来ていたりとか...ここ住んだりとかはできないなって(笑)」

――原作者、監督とクリエイティブな仕事ですが、アイデアで悩んだ時に工夫されていることはありますか?

押切「今がまさにそうですよね。昔と比べると、才能は枯渇してるっていうか、ポンポン出てきた発想もやりきってしまった感がちょっとね...年老いてしまったんじゃないのかなっていう寂しさはあります。1カ月に8本の連載をしてた時は湯水のように出てきた発想が、今はないことがちょっと焦っております。さっきも言ったように、俺はピークだと毎年のように言っているんですけど、そんな寂しさはあるんですよ。何かしらいろんな作品を見たりとか経験したりとかした方がいいな。僕は劣等感が相当高いので、それがモチベーションに繋がるタイプなので、怒りとかが原動力だと。白石監督も絶対そうだよね、見てるとなかなか攻撃性は高い方だと思いますが...」

白石「それはそうかも(笑)」

押切「それがモチベーションとか表現に繋がったりするはず。怒りが欲しい!そして敵が欲しいです!(笑) 若い頃はライバルいたし負けたくないっていう気持ちが、強かったと思うんですよ。でも年齢を重ねて落ち着いてきて、ゆっくり過ごしたいなみたいな話になると、やっぱり作品にも影響してきちゃうんです。大学でね、いろんな創作系の仕事で食べていきたいっていう若者たちに、何か創作する上でアドバイスをくれって言われたんですけど『とにかく失恋をしまくること』『悔しい思いをすること』あと『敵を作りなさい』って言ったんですよ。それは今思えばすごい暴言に近い言葉だと思うけど、結構、真理だと思っています。そうすると面白い作品ができるんですよ。性格が悪い方がやりやすいのかもしれない...クリエイティブマンとしては、だから今ゆったりした気持ちではあるんですけどある程度の攻撃性をまた取り戻したい」

白石「アイディアが出てこないときは集中するという意味で、イヤホンをして音楽を大音容量で流して、音を遮断した状態で暗いところに入って、パソコンの画面に集中する。強制的にゾーンに入ります。結構きつい状態なので我慢してやらないといけないんですけど、我慢を超えたら徐々にふわっとアイディアが出てくる。通常はスマホでNetflixとかYouTubeとかX(旧:Twitter)を見たりしながら、合間に作業するんですけど、もう時間もないときは無理やりゾーンに入ることをやってます。時間に余裕があれば、誰かと会って話すと、そこで何か新しいもの、リフレッシュと新しいアイディアが何か出てきたりする。もう1つ重要なことは、アイディアが何も思いつかなくても、その時点でわかってること、思いついてることを全部書き出すと、それに連なってだんだん他のものが見えてきたり、何かを思い出したりすることがあります。あとは映画を観るとか」

文=HOMINIS編集部

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公開情報

映画「サユリ」
公開日:2024年8月23日(金)
配給:ショウゲート

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