『兄を持ち運べるサイズに』──中野量太監督が5年ぶりのメガホンで問いかける"人を見送る意味"

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『兄を持ち運べるサイズに』
『兄を持ち運べるサイズに』

(C)2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

作家・村井理子によるノンフィクションエッセイ「兄の終い」を映画化した『兄を持ち運べるサイズに』が11月28日(金)に公開される。

『浅田家!』から5年──映画監督・中野量太が再びメガホンを取り、映画『兄を持ち運べるサイズに』を生み出した。原作との出会い、タイトルに込めた思い、こだわり抜いたアパートのシーン、そして柴咲コウ・オダギリジョー・満島ひかりとの演出秘話まで。「人を見送ることの意味」を問いかけるこの作品に、中野はどんな視点を込めたのか。

『兄を持ち運べるサイズに』中野量太監督
『兄を持ち運べるサイズに』中野量太監督

(C)2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

――5年ぶりの監督作ですが、メガホンを取ろうと思ったきっかけを教えてください

「始まりは、とあるプロデューサーからの連絡でした。『面白い原作があるかやりませんか』と提案いただいたのが『兄の終い』で、当時の僕は『浅田家!』の後はオリジナル作品をやりたいなと思っていたのですが、拝読したら自分が今まで描いてきた路線の話で、『これはやってみたい』と思い、制作をスタートしました」

――「兄を持ち運べるサイズに」というタイトルにはどんな思いが込められていますか?

「『湯を沸かすほどの熱い愛』などもそうですが、映画を観た後に『そういうことか!』となるタイトルが僕は好きで、今回もインパクトのある作品名にできないかと考えていました。そんなとき、原作の帯に『兄を持ち運べるサイズにしてしまおう』という一節が引用されているのを見て、『これだ!』と。作家さんにとってタイトルは本の顔ですから変えるのに勇気が要ったかと思いますが、(原作者の)村井さんは快く承諾してくださいました」

――柴咲コウさん・オダギリジョーさん・満島ひかりさんという3人のアンサンブルについて、特に印象に残っているシーンはありますか?

「物語の最後、兄のアパートで、理子(柴咲)、兄の元妻・加奈子(満島)、そして息子の良一(味元耀大)のそれぞれの前に兄が現れるシーンです。亡くなってしまった兄を『この人はこういう人だ』と一言で言い表すことは、僕は絶対にできないと思っています。だからこそ最後に、それぞれの心の中にある"兄の姿"が、それぞれの思いとともに現れるあのアパートのシーンは、僕が最初からずっと撮りたかったシーンですし、この映画の軸になっていると思っています。それを、見事に受けの芝居で演じてくれたオダギリさんも本当に素晴らしかったですし、それを引き出してくれた3人のお芝居もまた素晴らしかった。僕にとって、一番好きで、一番こだわって撮ったシーンです。

オダギリさんはもともと素晴らしい俳優だと思っていましたが、『湯を沸かすほどの熱い愛』から10年振りにお会いして、年を重ねた今だからこその表情を見せてくださいました。その表情を僕自身も求めていましたし、改めてすごい俳優だなと感じたシーンでもあります」

――HOMINISでは今作が映画初出演となった娘・満里奈役の青山姫乃さんにもインタビューを実施させていただきましたが、青山さんのキャスティングの決め手はなんですか?

「オーディションにはお芝居がとても上手な方も参加してくれて最後まで悩んでいたのですが、"この映画には彼女が必要。最終的に絶対に良くなる"と青山さんに賭けました。その代わり、ある程度慣れた状態で撮影に臨めるように事前に満島さんたちと会っておやつを食べる時間を作ったり、加奈子に向けた手紙を書いてもらったりしてフォローはしたつもりです。青山さん自身がとてもたくましい子で、現場でもすぐに満島さんと打ち解けて、楽しそうにおしゃべりしていました」

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公開情報

映画『兄を持ち運べるサイズに』
2025年11月28日(金)公開
原作:村井理子「兄の終い」(CEメディアハウス刊)
監督・脚本:中野量太
出演:柴咲コウ、オダギリジョー、満島ひかり、青山姫乃、味元耀大ほか
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
(C)2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

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