前人未到「タイトル通算100期」に挑む羽生善治竜王のすごさ

羽生善治は、1996年に将棋界の七冠(当時)制覇を成し遂げ、一大フィーバーを巻き起こした、20年以上経った現在もタイトルを持つトップ棋士だ。昨年は永世七冠獲得により国民栄誉賞も獲得。羽生のすごさは30年以上も第一線で戦っているところだ。

東京・八王子将棋クラブで成長した羽生は、「小学生名人」を獲得して天才少年として注目を集めた。当時のライバルは後年タイトル戦でたびたび激突する森内俊之九段である。その後、奨励会をわずか3年で突破(突破率は3割、一般には10年ほどかかるといわれている)。15歳で四段昇段となり、加藤一二三九段、谷川浩司九段に次ぐ史上3人目の中学生棋士となった。

プロ入り後も破竹の勢いで勝ちまくり、18歳で1988年度の記録部門四冠(対局数、勝数、勝率、連勝)を制覇した。翌年には第2期竜王戦でタイトル初挑戦し、激戦の末に「竜王」を獲得。19歳2ヶ月でのタイトル獲得は、当時の最年少記録である。翌年の防衛戦で谷川に「竜王」を奪われるが、4ヶ月後の棋王戦で「棋王」のタイトルを獲得。これが1991年3月のことだが、以来、羽生はタイトルを常に持ち続け、無冠に転落したことがない。

挑戦と防衛を重ねてタイトルを増やし続けた羽生は、1995年に六冠を持った状態で最後のタイトルである王将戦に挑む(現在のタイトルは8つだが、当時は7つ)。しかし、谷川がフルセットで「王将」を死守。七冠制覇の夢はついえたかに見えたが、羽生はその後の六冠すべてを防衛し、再び「王将」挑戦権も獲得。翌年、七冠制覇を懸けて谷川に再挑戦し、今度は4連勝と圧倒。前人未到の七冠制覇を成し遂げた。

将棋界にはタイトル獲得の規定を満たせば、永世称号を得られるシステムがある。タイトルによって規定は違うが、最も取りやすい称号でも通算5期、厳しいものだと連続5期や通算10期と、獲得は困難だ。タイトル獲得だけでも厳しい世界だが、永世称号となるとさらに厳しく、現在までにわずか10人しかいない。その永世称号を7つすべて取ったのはもちろん羽生が初めてだ。

「棋王」「棋聖」「王座」「王位」の永世称号を順調に獲得し、「王将」「名人」も間を置くも獲得。そんな羽生にとって最後の壁になったのが「竜王」だ。森内に一度、渡辺(明九段)に二度、「永世竜王」のかかったシリーズで敗れてしまう。40代後半になり、「永世竜王」は厳しいという雰囲気が漂う中、2017年に渡辺を下して見事「竜王」に復位。同時に「永世竜王」を獲得し、永世七冠を達成した。

この「竜王」獲得は羽生にとって通算99期目のタイトルだった。そして今年の「名人」挑戦、「棋聖」防衛戦は100期のかかったシリーズだったが、いずれも敗退。一冠に後退し、「竜王」の防衛戦を迎えることとなった。相手の広瀬章人八段はかつて2度タイトル戦で戦ったが、いずれも羽生が制している。しかし、今の広瀬は絶好調で年齢的にも指し盛りと最強の挑戦者だ。羽生は勝てばタイトル通算100期の大台だが、負けると1991年以来の無冠転落となる。将棋界のレジェンドにとって試練のシリーズとなる今期竜王戦は見逃せない。

文=渡部壮大



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放送情報

第31期 竜王戦七番勝負

放送日時:2018年10月24日(水)08:50~ほか

チャンネル:囲碁・将棋チャンネル

※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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