史上最強の女流棋士、それが出雲のイナズマこと里見香奈女流六冠だ。女流王座、女流名人、女流王位、女流王将、倉敷藤花と5つのタイトルを持っていたのに加え、新しく創立された清麗のタイトルも獲得。自身の持っていた女流五冠の記録をさらに1つ更新し、七冠制覇まで残すタイトルは女王(西山朋佳が保持)のみとなった。
里見は島根県出雲市の出身。将棋一家であり、妹の咲紀(女流初段)もプロ入りしている。里見のプロ入りは中学1年生の時で、デビュー後から活躍を始める。最初の大舞台はレディースオープントーナメント2006(翌期からマイナビ女子オープンに発展)で、当時中学3年生の里見が決勝三番勝負に勝ち残った。決勝の相手は矢内理絵子女流名人(当時)で、里見は第1局を制し中学生での棋戦制覇も期待されたが、結果は第2局、第3局を敗れて準優勝。しかし、セーラー服の中学生が大舞台に進んで第一人者と優勝争いをしたことにより、女流棋界が大きな脚光を浴びた。
初のタイトル獲得は2008年の第16期倉敷藤花戦。タイトル初挑戦の高校2年生が清水市代倉敷藤花(当時)から2連勝で奪取する快挙だった。翌年度以降は防衛しながら奪取を重ね、少しずつタイトルを増やしていく。
2011年5月、奨励会の編入試験を受けて1級で入会。女流棋戦での活躍を続けながら、奨励会でも昇段を重ねて三段リーグに到達。三段リーグはプロ棋士を目指す上で最後にして最大の難関だ。この直後に体調を崩し休場。三段リーグに参加せず、戦わずして失うタイトルもあった。
女流名人の一冠のみに後退した時期もあったが、休場から復帰後は三段リーグを戦いながらタイトルを次々と奪還していく。しかし三段リーグは5期戦い、最高成績は8勝10敗と勝ち越しすることができず年齢制限により退会。史上初の女性棋士誕生はならなかった。
奨励会退会後は女流棋戦を戦うかたわら、女流棋士代表として男性棋士の棋戦に復帰。その実力を発揮し、男性棋士との戦いも五分以上に渡り合っている。女流棋戦でも好成績を収め、女流六冠になったのは冒頭で触れた通りだ。残る一冠のマイナビ女子オープンは今年西山朋佳女王に挑戦したものの1勝3敗で敗れている。羽生の七冠フィーバーで将棋界が盛り上がったように、いずれは女流棋界での七冠も見たいものだ。
次々と女流棋士の記録を塗り替えていく里見香奈。ここから女流王将戦と女流王座戦の防衛戦が続いていくが、挑戦者はどちらも西山朋佳女王と最強の相手に決まっている。西山は現在奨励会三段リーグも戦っており(三段リーグに在籍した女性は2人のみ)、里見の成し遂げられなかった四段を目指している。里見・西山の八番勝負は現在の女性最強を決めるシリーズと言えるだろう。
文=渡部壮大
放送情報
(生放送)第41期 霧島酒造杯 女流王将戦 三番勝負
放送日時:【第1局】2019年10月5日(土)9:45~
【第2局】2019年10月23日(水)9:48~
※それぞれ対局終了まで延長放送
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
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