出口若武五段と服部慎一郎四段という非常にフレッシュな顔合わせとなった第7期叡王戦挑戦者決定戦。二転三転の熱戦を制したのは出口。タイトル初挑戦と同時に、六段昇段も決めた。出口は三段リーグで12期、通算6年と苦戦し、23歳でプロ入り。ただその実力は確かで、三段時代に新人王戦で決勝三番勝負に進出している。俊英揃いの井上慶太九段門下で、兄弟子には稲葉陽八段や菅井竜也八段など、トップ棋士がいる。
四段昇段を決めた出口だが、2019年度の順位戦1期目で苦戦し、いきなり降級点を喫してしまう。降級点を3つ取るとフリークラスに降級となってしまうが、翌2020年度は一転して勝ちまくり、C級1組へ昇級。前年のうっ憤を晴らす勝ちっぷりで、降級点も無効にした。
2021年度に入ると、女流棋士の北村桂香女流初段との結婚を発表。久しぶりに棋士と女流棋士の結婚となった。
段位別予選の叡王戦は五段予選に登場。古森悠太五段、西田拓也五段、黒田尭之五段、本田奎五段と手強いところを破り、初の本戦進出。本戦でも初戦で村田顕弘六段を破ると、さらに斎藤慎太郎八段、佐藤天彦九段とA級棋士の2人を破った。互いに初の挑戦者決定戦となった決勝は、冒頭で触れた通り服部四段との熱戦を制した。
五番勝負の相手は前期豊島将之九段から奪取し、初防衛を目指す藤井聡太叡王。出口も26歳と若いが、受けて立つ藤井は19歳とさらに若い。非常にフレッシュな顔合わせだ。
過去の対戦成績は藤井から見て4勝1敗。なお、両者は新人王戦の決勝三番勝負でも対戦しており、その時は藤井が2連勝で優勝している。直近の対戦は2年前で、そこは出口が初勝利をあげた。
過去の叡王戦では防衛に成功した棋士はいないが、番勝負で圧倒的な強さを見せる藤井にとっては関係ないだろう。だが、昨年のタイトル戦では18勝3敗と勝った中で、2敗が叡王戦五番勝負で喫したものという点は気になるところだ。チェスクロック使用の持ち時間4時間はタイトル戦の中で最も短く、1分将棋に追い込まれやすいことが原因かもしれない。正確無比な指し手を重ねる藤井といえども、1分将棋ではミスをすることもあるからだ。
元振り飛車党の出口だが、現在は居飛車で戦うことがほとんど。角換わり、相掛かりの激しい将棋になることが予想される。シリーズとしては藤井の優位はゆるがないだろうが、まず出口としてはタイトル戦初白星をあげたいところだ。
第1局は4月28日に東京都千代田区「江戸総鎮守 神田明神」で開幕する。全国各地を転戦し、フルセットになれば、6月中旬まで続く。奇しくも開幕戦となる第1局は出口の27歳の誕生日。初の大舞台で、自身の誕生日を祝うことができるか。
文=渡部壮大
放送情報
第30期 銀河戦 本戦Eブロック 4回戦 出口若武五段 vs 長谷部浩平四段
放送日時:2022年4月19日(火)07:00~
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
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