松坂桃李主演で日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた「新聞記者」など、日韓の傑作社会派映画を宇垣美里が語る<宇垣美里のときめくシネマ>

韓国の名優シム・ウンギョンと松坂桃李のW主演で描く「新聞記者」
韓国の名優シム・ウンギョンと松坂桃李のW主演で描く「新聞記者」

映画・マンガなどさまざまなサブカルチャーをこよなく愛する宇垣美里さんが、映画について語るこの連載。今回は、第43回日本アカデミー賞で主要3部門(作品賞、主演男優賞、主演女優賞)で最優秀賞を受賞した「新聞記者」(1月2日(木)9:50~日本映画専門チャンネル)と、第75回カンヌ国際映画祭でソン・ガンホが最優秀男優賞とエキュメニカル審査員賞を獲得した是枝裕和監督の「ベイビー・ブローカー」(1月2日(木)7:30~日本映画専門チャンネル)の社会派作品の2本を解説!

■現実とリンクした権力の闇に対峙する衝撃のサスペンス

2024年から2025年にかけての年末年始は曜日の具合が良いらしく、人によっては9連休、なんてこともあるんだとか!カレンダーと休みが連動しない仕事についているものとしては、羨ましいかぎり...。当然、皆さんそんなに休みがあったら積読している本、リストに入れっぱなしの映画を消化することに時間を割かれることでしょう。2時間越えの超大作や、海外ドラマシリーズの一気見を気兼ねなく楽しめるのは連休ならでは。

でも、そんな心も体も余裕が残っている年末年始だからこそ、あえてずっしりと重い社会派映画をお勧めしたい。鑑賞後にず~んとその世界にひたり、この社会の問題にしっかり目を向ける時間こそ、そういったタイプの映画鑑賞には必要不可欠なのだから。

たとえば2019年に公開された『新聞記者』。公開当時、口コミでどんどんと話題が広がっていった。

真実に迫ろうともがく若き新聞記者の吉岡(シム・ウンギョン)
真実に迫ろうともがく若き新聞記者の吉岡(シム・ウンギョン)

忖度せずに質問を繰り返す姿勢から記者クラブでは厄介者扱いされている東都新聞の記者・吉岡。彼女のもとにとある極秘情報が匿名のFAXで届き、真相を突き止めるべく調査に乗り出すことに。一方内閣情報調査室の官僚・杉原は現政権に不都合なニュースをコントロールする自分の仕事に葛藤を抱えていた。杉原は尊敬するかつての上司・神崎と久々に再会するが、その数日後に神崎が投身自殺し、思わぬ政権の暗部に触れることになる。

いわゆる"モリカケ問題"や女性ジャーナリストの性暴力事件の不起訴など、あきらかに現実にリンクした要素が感じられる本作。今見てもいち傍観者であった自分を指さされているかのようで、特に終盤に杉原が見せる表情といったら。結末の解釈を観客にゆだねる形だからこそ、その圧迫感と緊張感には身につまされ、観ていてあまりの情けなさに胃がキリキリしてきた。

自身の任務に葛藤する内閣情報調査室の官僚・杉原(松坂桃李)
自身の任務に葛藤する内閣情報調査室の官僚・杉原(松坂桃李)

5年前の作品なのに、未だにその中で議論されていた問題の真相は闇の中であり、その後また違った形の問題がどんどんと明るみになって、それでいてその疑惑の者たちはなんらとがめを受けていない現状にほとほと愛想がつきそうになる。

とはいえ隣国たる韓国ではよく見られる、このような自国の近現代の歴史を追い、批判する作品が日本でも公開され、あまつさえその翌年の日本アカデミー賞で最優秀作品賞をとった、という事実には一片の救いすら感じる。もちろん、そこで終わりにしてはならないのだけれど。

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放送情報【スカパー!】

新聞記者
放送日時:2025年1月2日(木)9:50~ ほか
ベイビー・ブローカー
放送日時:2025年1月2日(木)7:30~ ほか
チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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