松坂桃李主演で日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた「新聞記者」など、日韓の傑作社会派映画を宇垣美里が語る<宇垣美里のときめくシネマ>

偽物家族のロードムービー「ベイビー・ブローカー」
偽物家族のロードムービー「ベイビー・ブローカー」

■役者陣のリアル、ソン・ガンホの表情と天才子役の赤ちゃんに圧倒される

次に取り上げるのは、是枝裕和監督が韓国の名優たちと組んだ「ベイビー・ブローカー」。

借金に追われながらもクリーニング店を経営しているサンヒョンと赤ちゃんポストがある施設で働く児童養護施設出身のドンスは、預けられた赤ん坊をこっそり連れ出しては新しい親に繋げて謝礼を受け取る"ベイビー・ブローカー"として違法な商売に手を染めている。ある日赤ん坊を預けた母親・ソヨンに赤ん坊の連れ出しを気づかれた2人は、成り行きから共に養父母探しの旅に出ることになる。そんな3人を人身売買の罪で検挙するべく刑事が静かに追っていた。

「パラサイト 半地下の家族」のソン・ガンホが主演
「パラサイト 半地下の家族」のソン・ガンホが主演

寄せ集めの偽物家族によるロードムービーでありながら、その中で見られる絆をどうして家族と呼べないんだろう?と疑問を抱いてしまうほどに役者陣の距離感の変化や表情の和らぐ様子がリアル。台本通りの順番で撮られたと聞いて納得。母親だけが非難される現状に対する確かな怒りのようなものも感じさせ、難しく答えのない問題にそれでも取り組み続ける先には希望があるはずだという祈りが見えた。ソン・ガンホの表情に宿る父性、なにより赤ちゃんの天才子役ぶりに圧倒された。

どちらも見た後にしっかり受け止めじっくりと考える時間を必要とする作品だ。そこから何を得たのか、その先に何を見るのか、鑑賞時の自分の年齢や立場によっても変わるものだから、時間をおいて何度見ても面白い。ぜひたっぷりと時間をとって対峙してもらいたい。映画は見ている時間はもちろんだけど、その後の心の変化こそが醍醐味なのだから。

文=宇垣美里

この記事の全ての画像を見る

放送情報【スカパー!】

新聞記者
放送日時:2025年1月2日(木)9:50~ ほか
ベイビー・ブローカー
放送日時:2025年1月2日(木)7:30~ ほか
チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

詳しくはこちら

キャンペーンバナー

関連記事

記事の画像

記事に関するワード

関連人物