イラストネタの「トツギーノ」や、女性のあるあるをネタにしたコント「女子と女子」など、高い観察力をもって作られたネタが人気のお笑い芸人バカリズム。芸人だけではなくタレントやナレーター、俳優、書籍執筆と多方面で活動しているバカリズムだが、近年特に注目を浴びているのは、彼の観察力が遺憾なく発揮された脚本家としての仕事だろう。
今までのバカリズム脚本作品は、乗客が望む過去まで連れていくことが出来るタクシーの物語「素敵な選TAXI」(2014年)や、個性的な十人の女が一人の男を取り合う「黒い十人の女」(2016年)。バカリズム、若林正恭(オードリー)、二階堂ふみの3人が同じマンションの同じ階に住んでいるという設定の「住住」(2017年)など、どのドラマも一風変わった内容で、SNSなどでも話題になった。
そんな中でも、特筆したいのは「OLたちの会話がリアル過ぎる」と反響を呼んだ「架空OL日記」(2017年)。元々はバカリズムがOLになりきって綴ったブログ「架空升野日記」をドラマ化したもので、"あるある"過ぎるセリフ群が評価され、優れた脚本家に贈られる「向田邦子賞」を受賞している。ドラマでは、バカリズム本人がスカートをはき、入行5年目の銀行一般職OLに扮して主演したことも話題に。ツッコミどころ満載の本作であるが、今回はストーリーの中から、筆者(女性・OL経験あり)が特に共感した部分を紹介させていただきたい。
■通勤途中で会った同期のマキちゃんとの会話。しょうもないけど、どこか現実的
「マジでどこでもドア欲しいよね」
「ほんと、毎週この話してるけどさ、欲しいね」
「ヨドバシとかに売ってたら、絶対買うよね」
「あー買う買う!並んでも買う!」
「2~3時間とか、余裕で並ぶ」
満員電車に、会社の最寄駅からの徒歩。メイクは崩れるし、パンプスにしまい込んだ足は痛い。女性は通勤時の苦労も絶えないのだ。そんな時、女性なら誰もが一度は同僚と話したことがあるのでは?と思う「どこでもドア欲しい」トーク。しょうもない話だけれども、「ヨドバシとかに売ってたら買う、並んでも買う」という妙な現実感に、OLたちの想像力のたくましさが感じられる。
■アフターファイブに化粧品売り場で、グロスを試し塗りしてもらう際の一コマ
「私はこういう時いつも塗ってくれるお姉さんに、鼻息がかからないように息を止める。だいたい平均20~30秒。けれど、今日はお姉さんの手際が悪かったせいで、一分間くらい止めていなければいけなかった。後半、ガンダーラが見えた気がした」
これはOLというか、ほとんどの女性が共感できるのでは。店員のお姉さんにも、どこか気を回してしまうのが女性。筆者は息を止め続けてガンダーラとまではいかないが、千手観音菩薩くらいは見えたことがある。
■トイレットペーパーを交換しているのは私だけでは...?と思ってしまう
「ね、聞いて。今月取り替えるの3回目なの」
「そんなこといったら私、4回だよ」
「ってことは、うちらでほとんど替えてるかもね」
「多い方だよね」
「独占してるかも。むかつくね」
この会話を聞いて、純粋に(あ、これ思っているの私だけじゃないんだ...)と思ってしまった。トイレットペーパーの消費が多いのは女子トイレ特有のはず。なぜこのネタを思いつけるのか、バカリズム恐るべし!
いかがだっただろうか。OLの生態を細かく描写し過ぎており、「私、見られてた!?」と感じてしまうほどのバカリズムの観察力。ここまでくると、スカートをはいているだけで、髪型もメイクも普段と同じはずのバカリズムさえも、女性に見えてくる。「あー、たまにこういう人いるよね...」と思えてくるから不思議だ。ぜひ本作でOLの人は共感を、そうでない人はOLの生態を覗き見てみては。
文=津金美雪
放送情報
架空OL日記 一挙放送
放送日時:2018年8月18日(土)23:05~
チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
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