日向坂46・齊藤京子、自身考案の多彩なセトリで見せた歌手としてのポテンシャル「ソロコンサートは長い間待ち望んだ夢だった」

日向坂46の齊藤京子が、5月21日にぴあアリーナMMにてソロコンサート「MTV Unplugged Presents: Kyoko Saito from Hinatazaka46」を開催した。「MTV Unplugged」と言えば、世界中のトップアーティストが出演し、国内では宇多田ヒカルや平井堅、KinKi Kidsなどの一流アーティストが登場してきた伝統的なステージ。齊藤は自身の歌声を堪能できる彩り豊かなセットリストで会場を魅了した。

今回のライブは齊藤にとって初めての有観客ソロコンサート。これまでも「MTV VMAJ 2021 -THE LIVE-」で柊キライの「ラブカ？」を始め、「MTV LIVE SESSIONS: Kyoko Saito from Hinatazaka46」では中森明菜の「禁区」や、山口百恵の「プレイバックpart2」など、往年の名曲をずば抜けた表現力で披露してきた。今回は、通常のライブとは異なり、アコースティックな編成で行われるライブということで、開演前の会場はいつもの日向坂46のライブとは異なる厳粛な雰囲気で満ちていた。

ライブの世界観に合わせてシックな装いで登場すると、会場から大きな拍手が巻き起こる。1曲目は自身のソロ曲「孤独な瞬間」からスタート。椅子に座りながらゆったりとステージを楽しむかのように披露すると、「歴史あるコンサートに参加できて本当にうれしく思います。1人でとても緊張していますが、精一杯歌いますので、楽しんでいただけたら」とソロライブを開催できた喜びを語っていた。続く斉藤和義の「歩いて帰ろう」では、時折クラップを織り交ぜながら楽しげな歌声が会場全体に響きわたっていく。日向坂46のライブでは味わえない、齊藤のいきいきとした歌声がダイレクトに感じられ、改めてソロライブの開催意義を強く感じた。

「今回は男性アーティストの曲にもチャレンジします」というMCの後に披露されたのは、村下孝蔵の「初恋」。齊藤の妖艶で伸びやかな歌声とそれを支えるストリングスによって、新たな魅力を引き出していた。そして、「出会って涙が止まらなくなった」という緑黄色社会の「幸せ」では、間奏で身体を揺らしながら、しっとりと思いを込めながら歌い上げていく。今回は齊藤が自身で選曲というセットリストということで、一つひとつの曲にストーリーが感じられ、その熱量に強く心を動かされた。

中盤では日向坂46の「僕なんか」をピアノとストリングスによるバラードアレンジで披露。2022年5月には「THE FIRST TAKE」にてソロで披露し大きな反響があった同曲だが、齊藤の芯の通った歌声と力強いストリングスによって、この1年での成長を示す1曲となっていた。ソファへと場所を移動し披露したのは、椎名林檎の「本能」と宇多田ヒカルの「First Love」。「動」と「静」とも言える趣向の異なる難易度の高い2曲を齊藤は丁寧に歌いこなし、かつてないほどに表現の振れ幅を見せる。続く、aikoの「花火」では「クラップお願いします！」とオーディエンスに呼びかけ、齊藤も立ち上がって元気いっぱいにパフォーマンス。フロアでは約1万人のオーディエンスの手拍子が響き渡り、会場は静かな熱狂に包まれた。

「ここでしか歌うことのできない曲になるかもしれません」と言って日向坂46の「恋した魚は空を飛ぶ」を披露すると会場からはどよめきが起こる。それもそのはず二期生曲のため、一期生である齊藤が披露するのはかなり珍しい。変則的な楽曲なだけにどのようなアレンジで披露するのか楽しみにしていたが、スリリングに駆け抜ける疾走感はここでしか味わえないものになっていた。最後には「自分にとって大切な曲であり、辛い時や壁にぶち当たった時に聴いてほしい」と語り、自身初のセンター曲となる「月と星が踊るMidnight」を披露し、本編は幕を下ろした。

アンコールを受けて再度登場した齊藤は「ソロコンサートは長い間待ち望んだ夢だったので、本当に嬉しく思います」と改めて喜びを語ると、けやき坂46時代から歌ってきたソロ曲「居心地悪く、大人になった」を披露し、ステージを後にした。白色のペンライト一色で埋め尽くされた会場に語りかけるように歌う齊藤の姿はこの先も刻まれ続けることだろう。

本公演の模様は6月24日(土)に放送されることが決定。齊藤の思いが詰まった一夜限りのライブを体感してほしい。

取材・文＝川崎龍也

この記事の全ての画像を見る