AKB48のチームAに加藤玲奈というメンバーが所属している。ことし3月にソロ写真集が発売されたほか各誌を飾るグラビアが好評で、グループ内の"ビジュアル担当"としてファンの間で認知されている。しかし、彼女が存在感を発揮しているのはその外見だけではない。TBSチャンネル1で8月18日(土)、19日(日)に放送される「劇団れなっち『ロミオ&ジュリエット』」は彼女の名前を冠した舞台公演だ。れなっちとは、加藤玲奈のことである。
この劇団の結成は、2015年にSNSを通じて寄せられたファンからのリクエストに応え、加藤が自身の推しメン(イチ推しのメンバー)を選出した「れなっち総選挙」に起因する。加藤ひとりのSNS上で始まった企画だったが、立候補したメンバーが多く、選挙の結果を受けて選ばれた「れなっち選抜」のために総合プロデューサーの秋元康が詞を書き下ろしたことで注目を集めることに。2017年の同選挙において「劇団れなっち」の企画が発表され、旗揚げに至った。
"ノリ"で始まった企画のように見受けられるかもしれないが、今作の責任演出を堤幸彦が務めている点でその本気度がうかがえるだろう。同氏が選考を務めたオーディションの結果、黒組と白組のWキャストとなる出演メンバー32名が決定。ここではその中の何名かを紹介したい。
まずは白組のロミオ・神志那結衣(HKT48)。バラエティー番組で男装姿を披露したこともある彼女は、163cmの身長と端正な顔立ちを生かしてイケメンなロミオになり切った。悲恋ものでありながら笑いの要素もちりばめられた川尻恵太の脚本の中に描かれたロミオを、上品に体現したと言える。相手役の岡田奈々(AKB48/STU48)は、男勝りなキャラクターとして描かれたジュリエットを好演。ロミオと恋に落ちた瞬間から女性らしさが溢れ出すスイッチの切り替えは見事だ。また、そのジュリエットのばあや役を務めた北川愛乃(SKE48)の愛嬌ある"乳母感"、物語のカギを握る悪役として設定されたディボルト役の古賀成美(NMB48)の"嫌なヤツ感"にも注目していただきたい。
黒組のロミオ・藤田奈那(AKB48)は声の魅力が全開だ。無理やり男役に寄せているという不自然さはなく、やや荒々しささえ感じられる演技と相まって白組の神志那とは一味違った男っぽいロミオを作り上げた。一方、ジュリエット役の福岡聖菜(AKB48)はロミオにケンカを売るような場面でも、勝気の中に可愛げがにじむ演技を披露。そんな2人を手助けするロレンス神父役の田島芽瑠(HKT48)は、持ち前の度胸のよさを見せつけながら、アドリブと思われるセリフを連発するなど、コメディエンヌとしての才能を遺憾なく発揮している。
大所帯のアイドルグループが多く存在する今、グループ内のメンバーだけでほぼすべての役を演じる作品は増えている。これは、すでにひとつのジャンルとして定着した2.5次元舞台と共に演劇界に新たな潮流を生み出しつつある。「所詮はアイドルの舞台だから...」と揶揄する声はいまだに聞こえるが、洗練され切った舞台とは違う楽しみ方をしてみてはどうだろうか。同じグループのメンバー同士だからこそ成立する息の合った掛け合いや、Wキャストゆえに両組間で見え隠れするライバル意識のせめぎ合いは、新たなステージの魅力を紡ぎだしていくだろう。
文=大小田真
放送情報
AKB48グループ出演舞台 劇団れなっち「ロミオ&ジュリエット」[白組]
放送日時:2018年8月18日(土)20:30~
チャンネル:TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画
AKB48グループ出演舞台 劇団れなっち「ロミオ&ジュリエット」[黒組]
放送日時:2018年8月19日(日)20:30~
チャンネル:TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画
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