黄金時代真っ只中な菊池桃子のアイドル性に目を奪われるライブ「KIKUCHI MOMOKO in LIVE FANTASY 1986.2.15日本武道館」

1986年2月に行われた菊池桃子の日本武道館公演「KIKUCHI MOMOKO in LIVE FANTASY 1986.2.15日本武道館」がMUSIC ON! TVで放送される。

菊池桃子は1984年に芸能活動をスタートさせた。1980年デビューの松田聖子や後に"花の82年組"と呼ばれた1982年デビューの中森明菜、小泉今日子、松本伊代、早見優などが活躍し、まさに"アイドルの時代"となっていた時期にデビューしたことになる。1984年3月にはヒロインを務めた映画「パンツの穴」が公開され、その直後の4月21日に「青春のいじわる」で歌手デビューを果たした。アイドル誌、映画、歌といったいろんなメディアに進出し、この年のブロマイドの年間売り上げが１位となりトップアイドルへと急成長。同年9月にリリースした1stアルバム「OCEAN SIDE」はチャート１位を記録し、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった。

しかし、それはまだまだ序章に過ぎなかった。1985年に初の日本武道館公演を行い、17歳だった菊池は当時の最年少公演記録を樹立。同年2月にリリースした4thシングル「卒業-GRADUATION-」がシングルとして初のオリコン1位に輝き、そこから7作連続で1位を記録するなど、1985年に"アイドル菊池桃子"の黄金時代が始まった。

今回放送される日本武道館公演は、まさにそんな黄金時代真っ只中に行われた、彼女の人気の凄さが伝わる貴重なライブとなっている。

2ndアルバム「TROPIC of CAPRICORN 〜南回帰線〜」に収録されている「Alfa Flight」でライブが始まった。青と白のボーダー柄のワンピースでステージに登場し、柔らかな歌声を聴かせてくれる。2曲歌ったところで、「皆さん、こんにちは。菊池桃子です。こうして皆さんにお会いできたこと、とっても嬉しく思っています」と笑顔で挨拶をし、どこから来たのかファンへの質問などを行った。

「カレンダーにイニシャル」「Evening Break」などポップス曲ではクルクルと回転してスカートをふわりとひるがえしたり、軽やかに踊ってみたり、彼女の明るい一面をたっぷり楽しむことができる。

ダンサーに囲まれての早着替えで、光沢のあるパープルの衣装になり「アドレサンスの週末」を披露。1986年3月に"ハレー彗星が大接近"という出来事があったが、MCでそのタイムリーな話題に触れつつ、代表曲の一つ「もう逢えないかもしれない」を歌唱。

いろんな衣装が楽しめるのもこのライブの見どころ。清純派アイドルらしい白いワンピースで「卒業-GRADUATION-」を歌ったり、カジュアルでポップな衣装でデビュー曲「青春のいじわる」をはじめ、「雪に書いたLOVE LETTER」「Summer Eyes」といった初期のシングル曲を立て続けに披露したり、衣装によって違う雰囲気も味わえた。

「今日、こうしてコンサートが開けたのも皆さんのおかげだと思います。素敵な１ページを綴ることができました。桃子、今日のこと、いつまでも忘れません」とファンに感謝の気持ちを伝え、この公演の2日前にリリースしたばかりのシングル曲「Broken Sunset」で本編を締めくくった。

アンコールはティアラをつけた衣装で登場。歌った「BOYのテーマ」が主演映画「テラ戦士Ψ(さい)BOY」の主題歌ということもあってか、衣装やステージ演出からも宇宙をイメージさせた。最後は、最新シングル「Broken Sunset」のカップリング曲「EDEN of Galaxy」を披露。緑のレーザービームの演出で幻想的な空間を作り出し、最後は星型のゴンドラに乗り、ステージ上方へと昇っていった。

この公演を見ていると、アイドル性の高さを再確認できるだけでなく、楽曲の良さも伝わってくる。この時までに発表されていた菊池桃子の楽曲(シングル、アルバムも全て)の全作詞・編曲を手がけているのは林哲司。中森明菜の「北ウイング」、原田知世の「愛情物語」、竹内まりやの「SEPTEMBER」、そして近年の"シティ・ポップ"ブームのきっかけとなった松原みきの「真夜中のドア〜Stay With Me」も林哲司によるもの。また、3月29日(水)にはおよそ35年ぶりに林哲司プロデュースによる新曲を収録したコンセプトアルバム「Shadow」が数量限定盤としてLP化され、その良さを感じることができる。

シティ・ポップの系譜に通じるエバーグリーンさがある菊池桃子の曲は、今聴いても瑞々しさが感じられる。この貴重な日本武道館公演で、菊池桃子の魅力を再発見してもらいたい。

文＝田中隆信

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