ラジオDJの赤坂泰彦さんにとって、かつて深夜ラジオ界を席巻していたフォークソングとはどのようなものだったのか。フォークソングのイメージを変えた吉田拓郎と谷村新司(アリス)について、赤坂さんに尋ねた。
'60年代後半から'70年代にかけて、日本の音楽シーンにおいて大ブームとなったのが"フォーク"だった。その中で吉田拓郎はソロ(デビュー当時は、よしだたくろう)で、谷村新司は堀内孝雄と矢沢透と共にフォークグループ"アリス"としてデビューした。
「中学校の頃に、吉田拓郎さん、泉谷しげるさん、谷村新司さんなど、フォークの方々がラジオでレギュラー番組を持っていたんです。なので、世代的にラジオとフォークソングというのがリンクしていますね。喋りの面白い方たちというイメージがありました(笑)。一口にフォークといってもいろんなタイプがあって、当時は反体制とか反商業主義こそがフォークソングの神髄みたいな感じがありましたけど、拓郎さんはそこに行かず、日々の生活の中の言葉、非常に個人的な気持ちを歌っていたような気がします。それは意識して差別化したわけではなく、自然とそうなったとおっしゃっていたんですが、聴く側としても、岡林信康さんや高田渡さんといった方と、拓郎さんやアリスは違って聞こえましたね」
赤坂さんに吉田拓郎の魅力をより深く語ってもらうと...。
「当時、『砂漠に歌という水を撒いたのが吉田拓郎だ』という表現があって、プロデューサーの権利を確立したり、楽曲提供したりと、音楽界を開拓した方です。拓郎さんが書く曲は、一つのおたまじゃくし(音符)に一つの言葉ではないんですよね。言葉を詰め込むというか、むしろ字余り的な。そこから日本語の歌が変わっていって、後のサザンオールスターズや長渕剛さんなども影響を受けているでしょうし、功績が大きいと思うんです。『旅の宿』『夏休み』など日本的な曲もあれば、『シンシア』みたいなポップスがあったり。歌いたいことを歌っていたら自然といろんなテーマの曲ができたということなんでしょうね」
谷村新司のアリスも、いわゆるフォークのイメージとは違った雰囲気を持つグループだった。
「アジアにも目を向けていたと思うんですが、谷村さんのソロの曲『昴‒すばる‒』も含めて、歌詞の世界観が大陸的というか、壮大なんですよね。でも、そこには日本人の持つわびさびや情に熱いところが感じられます。財布を落としても届けられたりしますし、困った人がいたら手を差し伸べる国ですから。拓郎さんも谷村さんも歌詞をかみしめながら、放送を楽しんでもらいたいですね」
取材・文=田中隆信
あかさか・やすひこ●'59年生まれ。ラジオDJや番組MC、ナレーターとして活躍中。現在は「歌謡プレミアム」(BS 日テレ)、「ラジオマンジャック」(NHK-FM)にレギュラー出演中。
放送情報
谷村新司 TANIMURA CLASSIC 2018
放送日時:2021年6月20日(日)18:00~
吉田拓郎 LIVE 2019 -Live 73 years- in Nagoya
放送日時:2021年6月27日(日)18:00~
チャンネル:WOWOWプラス
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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