(C) Warner Bros. Entertainment Inc.
そういった「ラストカウボーイ」としての厳しい自覚を引き受けたイーストウッドの、西部劇人生の集大成でありピークとなったのが、1992年の『許されざる者』である。舞台は1880年代のワイオミング。イーストウッドが演じるのは、かつて列車強盗や冷酷な殺人で、悪名を世間に轟かせた老ガンマンのウィリアム・マニー。今では人里離れた村で、2人の子どもと一緒に農場を営みながら静かに暮らしていたが、しかし生活苦は否めず、再び銃を手にして賞金稼ぎの旅に出る――。
汚れた過去に苛まれる男の贖罪の物語。当時、イーストウッド自身が「最後の西部劇」とも口にしていた本作は、自らのキャリアと共にあったジャンル体系に対する彼なりの落とし前であり、本作発表を前に続けて亡くなったセルジオ・レオーネ(1989年逝去)、ドン・シーゲル(1991年逝去)の両名に捧げられた作品でもある。
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ちなみに映画監督としてのイーストウッドの評価は、長い間アメリカでは不当に低く、むしろ日本や、フランスをはじめとするヨーロッパのほうが先行した。伝説のジャズマン、チャーリー・パーカーの生涯を描いた『バード』(1988年)は、主演のフォレスト・ウィテカーが第41回カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞。そして『許されざる者』は仏カイエ・デュ・シネマ誌の1992年度ベストテンで第1位に選出された。
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周知のとおり、この「最後の西部劇」のあとも、イーストウッドは多数の監督作を放ち続け、特に主演を兼ねた『スペース カウボーイ』(2000年)や『グラン・トリノ』(2008年)などは格別の味わいがある。逆に自身の監督作ではないもの――俳優だけに徹した作品群はフィルモグラフィの中でも見過ごされがちだが、『ダーティハリー2』(1973年)の脚本を手掛け、これがデビュー作となったマイケル・チミノ監督の『サンダーボルト』(1974年)や、脱獄ものの名作であるドン・シーゲル監督の『アルカトラズからの脱出』(1979年)、さらにキャリア後期の人気作『ザ・シークレット・サービス』(1993年)など、どれも必見の面白さだ。
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実際にこれらの作品にアクセスすることで、やはりイーストウッドこそが「シネマの象徴」である、と問答無用に確信することができるだろう。彼が画面に映るだけで、スクリーンは映画の愉楽に満ちあふれるのだから。
文=森直人
森直人●1971年生まれ。映画評論家、ライター。著書に「シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~」(フィルムアート社)、編著に「21世紀/シネマX」「シネ・アーティスト伝説」「日本発 映画ゼロ世代」(フィルムアート社)、「ゼロ年代+の映画」(河出書房新社)など。YouTubeチャンネル「活弁シネマ倶楽部」でMC担当中。映画の好みは雑食性ですが、日本映画は特に青春映画が面白いと思っています。




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