■心を掴まれることを約束するから頼むから観てほしい...
映画には時々、転換点となるような作品が現れる。この作品以前・以後で潮流ががらりと変わるような作品。たとえば人々の中にある宇宙のイメージを大きく変えた「スター・ウォーズ」、SFアクションの在り方を飛躍させた「マトリックス」、スペースオペラだというのにストーリーとリンクした既存のポップミュージックをふんだんに取り入れた「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」。そしてアニメーション映画の転換点にして革命、その後の世界の潮流を変えた作品には「スパイダーマン:スパイダーバース」(2018年)が挙げられるだろう。映画好きは必見の作品。いや、映画がたとえ好きじゃなくとも、アニメがあまり得意じゃなくても、心を掴まれることを約束するから頼むから観てほしい......正直DVDを配って回りたいほど、私はこの作品を愛している。
ニューヨークに住む高校生のマイルス・モラレスはある日、変異したクモに噛まれ、特殊な力が使えるようになる。自身が突然手にした力の真相を探っていたところ、敵と交戦するスパイダーマン/ピーター・パーカーと遭遇。危険な実験を止めようとして重傷を負ったスパイダーマンは、マイルスに後を託して死んでしまう。
彼の遺志を継ぐべく訓練に励むものの、なかなかパワーを使いこなせずにいたマイルスの前に、別次元からやって来たスパイダーマン/ピーター・B・パーカーが現れる。何者かによって時空が歪められたため、他の次元から来たスパイダーマンたちと共に、マイルスは戦うことを決意する。
スパイダーマンは、普通の人間が突然変異したクモに噛まれてなるということや、その多くがヒーローとして戦うなかで身内を失っているということ、今自分が生きている世界以外の世界が異次元には無数に存在しているというパラレルワールドの概念さえ押さえていれば、「スパイダーマン」シリーズを観たことがなくても存分に楽しめるのが本作。魅力はやはり、革命的ともいえるビジュアルのアニメーションにある。
それはまるで動くアメコミ。クリエイターによって描かれた絵がそのまま動き出したかのような2Dらしさの残る質感とバキバキの色使い、エッジの効いた構図。マンガのコマのような吹きだしや書き込まれた効果音も一緒に動いていたり、あえてコマ数を減らし、歌舞伎の見栄のような、決めポーズからの動きをカクカクとしたアニメーションで表現することでかえってスピード感を助長していたりと、斬新さは枚挙に暇がない。ありとあらゆるところに小ネタが散りばめられていて、その情報量は一度では拾いきれないほど。それぞれの次元からやって来たスパイダーマンたちはタッチもトーンもまるで違う。そんな彼らが同じ画角に収まっているシーンは、はちゃめちゃなのにどこか統一感もあって、その奇妙さが生む絵としての楽しさに心を奪われた。
放送情報【スカパー!】
スパイダーマン:スパイダーバース
放送日時:2024年2月11日(日・祝)19:00~
スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
放送日時:2024年2月11日(日・祝)21:00~、21日(水)14:15~
チャンネル:WOWOWシネマ
(吹)スパイダーマン:スパイダーバース
放送日時:2024年2月13日(火)19:15~、25日(日)20:00~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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