
この話は父と娘、父と愛馬、そしてアクション。日本版ポスターに「アクションのち、涙」とあるがまさにだ。しかし、事をそう単純にしたくもないのが本作。というのもこの作品はジャッキーだからこそ光っている作品だからだ。
2025年8月9日にスイスで開催されたロカルノ国際映画祭でキャリア・レオパード賞を受賞したジャッキーはこう述べた。
「アクションもできる俳優として評価されたかった。今になってやっとジャッキーはいい俳優だと言われるようになった」
本作はその俳優の面を色濃く出している。情動が揺れ動くシーンが多い中、「父」としての顔「スタントマン」としての顔「師」としての顔、様々な関係性の中の顔を魅せるジャッキーの芝居は観ていて惹かれる。

(C)2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO.,LTD. BEIJING HAIRUN Pictures CO.,LTD.
特に個人的に印象的なのは小さなテレビで実際にジャッキーが若い頃、行ってきたスタントのビハインド映像をルオとシャオバオが観る場面。あのシーンは全く虚構さ(フィクション)を感じなかった。本物の映像を使っている、またジャッキーが体験してきたことということもあるが積み上げてきたものがジャッキーをジャッキーにさせているという事実がまざまざと象徴されているシーンでもあり、この作品は本当にジャッキーしか出来なかったなと感じるシーンでもあった。
また、中国・香港映画は比較的テンポが早い。邦画は比較的心理描写を丁寧に描くことが多いが中国・香港映画はその過程を時に飛ばすことがある。それはアクションのためにテンポ感を落とさないということもあり一概にどちらにも良し悪しをつけることは出来ない。ただ、本作では涙を流すシーンが多く、感情の助走がないように感じる場面もあるだろう。だがそんな中でも、ジャッキーのスタントマンとしてのプライドと家族への愛情を表現する芝居は芯に迫るものがあるのだ。自身に近いからということもあるかもしれないが、老獪な役者としてのジャッキーがよく観える一見する価値がある面白い作品だ。
最後に、アクションについても言わねばならない。勿論若い頃のような奇想天外な動きはしていないが70歳手前の俳優がこの動きをしているとは思えない、と感じるシーンばかりだ。何個かCGだなと思うシーンがあったのだが、EDにビハインド映像が出て来るのでチェックして見てほしい。是非、ご覧あれ。
文=田中諒
放送情報【スカパー!】
ライド・オン
放送日時:2025年9月6日(土)21:00~
放送チャンネル:ムービープラス
※放送スケジュールは変更になる場合があります
詳しくは
こちら