マッツ・ミケルセン、「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」で描く"禁断の愛"――北欧の至宝が語る歴史劇の裏側

韓流・海外スター

『ロイヤル・アフェア愛と欲望の王宮』
『ロイヤル・アフェア愛と欲望の王宮』

――しかし物語の通り、やがて彼は王妃との関係にのめり込みますね

「頭ではなく心で動いてしまった結果ですね。彼は王妃と激しく愛し合うようになります。王、王妃、そしてストルーエンセ。3人がそれぞれ違った形で愛し合ってしまったために、事態は非常に複雑になります。国を導く立場にありながら王妃との関係を隠し、しかも二人の間に子供までできてしまう。本当に困難な状況でした。王妃の手紙からも、二人が激しく情熱的な恋をしていたことが確かにわかります」

――この物語は実話に基づいていますが、デンマーク人としてこの歴史をどう認識していましたか?

「デンマークでは誰もが知っている話です。簡単に言えば『ドイツ人医師がやって来て、王妃と関係を持ち、国を支配し、やがて処刑された』というのが一般的な理解でしょう。でも掘り下げていくと、もっと複雑で多面的な物語が浮かび上がってきます。私たちも事実すべてを知ることはできません。推測や記録をもとに、どんな人間だったのか、なぜそうしたのかを想像するしかないのです。」

――歴史劇ですが、デンマーク語で撮影されたことも印象的でした

「母語であるデンマーク語で演じられるのは嬉しいことです。ただ実際の宮廷ではフランス語やドイツ語が使われていて、デンマーク語は農民の言葉でした。それでも映画としてはデンマーク語で統一することで、物語を自分たちの文化のものとして描けたと思います」

――ご自身は国際的にハリウッド作品でも活躍されていますが、北欧映画にこだわり続ける理由は?

「それは自分の文化的な基盤だからです。母語で芝居ができる環境はやはり居心地がいい。外国映画では『フランス語を話せ』『ピアノを弾け』『ロシア語を学べ』といった課題が重なりますが、デンマークに戻るとすぐに役に集中できる。だから今後も続けていきたいですね」

『ロイヤル・アフェア愛と欲望の王宮』
『ロイヤル・アフェア愛と欲望の王宮』

――ミケル・ボー・フォルスゴーが映画初出演で国王・クリスチャン7世を演じました。彼の「狂気」をどう見ましたか?

「私の演じたストルーエンセと同じように、まず「愛情」をもって見ていました。王には子供のような無邪気さと不安定さが同居していて、とても複雑な存在です。ミケルにとっては初めての映画で大変だったと思いますが、彼は「狂気のバージョン」と「無邪気な子供のバージョン」を演じ分け、その振れ幅が作品を豊かにしました。本当に難しい役どころでしたが、見事にやり遂げたと思います」

――彼をサポートすることもありましたか?

「彼自身がどんどん自信をつけ、議論に加わり、俳優としての存在感を主張するようになりました。私は背中を押す程度で十分でしたね」

――アリシア・ヴィキャンデルについて。彼女の魅力は何でしょうか?

「彼女は素晴らしい女優ですし、カメラが彼女を愛している。小さな仕草までもがスクリーンに映える。それはお金では買えない才能です。私たちも羨ましいくらいです」

監督ニコライ・アーセルとマッツ・ミケルセン
監督ニコライ・アーセルとマッツ・ミケルセン

――監督ニコライ・アーセルの演出スタイルについては?

「非常に精密で、映像的にも巧みな監督です。ただスタイルだけではなく、役者に寄り添い、感情を引き出す力を持っていました。歴史劇をただ形式的に撮るのではなく、観客が心を動かされる作品に仕上げてくれました」

――デンマークを離れているとき、一番恋しくなるものは何ですか?

「やはり家族です。それから母語であるデンマーク語、そして地元の食べ物。国そのものの美しさというより、自分の『基盤』であることが大切なんです」

――デンマークについて世界で誤解されていることがあるとすれば?

「どんな国もそうですが、メディアや本だけでは本当の姿は伝わりません。実際に訪れ、その空気を感じることが必要です。だから興味がある人にはぜひデンマークに来てほしいですね」

文=HOMINIS編集部

この記事の全ての画像を見る
  1. 1
  2. 2
  1. 1
  2. 2

公開情報

『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』
(2012年/デンマーク/監督:ニコライ・アーセル)
ベルリン国際映画祭 脚本賞&男優賞W受賞。デンマーク王室最大のスキャンダルを描いた歴史劇。

〈北欧の至宝〉マッツ・ミケルセン生誕60周年祭
2025年11月14日(金)より
新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷 ほか全国公開
配給・宣伝:シンカ/パブリシティ:ポイント・セット

■マッツミケルセンの出演作品はコチラから

詳しくは
こちら

Person

関連人物