実在の人物を演じるにあたり、覚悟を決めて過酷な撮影に臨み、全身全霊で向き合ったヒョンビン。重圧、恐怖、迷い、痛み。雪と泥に塗れたシナ山での激戦も、極寒の中で氷上に倒れ込み歩き出すシーンにも挑み、その行動や決断の裏にある思いや真心そして人間性を、魂を込めて多面的に作り上げる。

俳優として確かな地位を確立してなお、難役に挑む――。家庭を持ち、父となり、さらなる深みを増していく過程にある40代を迎えたヒョンビンだからこそできる演技に圧倒される。

共演には、「密輸 1970」(2023年)のパク・ジョンミンや「トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜」(2016年)、「優しい男の物語」(2025年)のイ・ドンウクのほか、特別出演のチョン・ウソンまで、韓国映画界が誇る実力派が集結。また、伊藤博文役に抜擢されたリリー・フランキーも韓国映画初出演を果たし、存在感を見せる。

アジアを震撼させた歴史的な事件の裏側を壮大なスケールで描く極限サスペンス・エンターテインメント大作「ハルビン」。未来へ続く決断と信じて揺るがぬ覚悟で命を賭けた男を、ヒョンビンもまた強い覚悟と真心をその瞳に宿して熱く演じきった。

文＝中川菜都美