新型コロナウイルス対策に伴う緊急事態宣言により、全国の映画館も休館が続いているが、それまで国内の映画興収ランキングで上位をキープし続けていたのが、米国アカデミー賞で4冠達成の快挙を達成した韓国映画『パラサイト 半地下の家族』だった。
同作において、ひときわ存在感を発揮していたのが、成功者の象徴として描かれていたIT企業CEO役のイ・ソンギュンだ。特に、その個性的な低音ボイスは"魔性の声"とも呼ばれ、彼の人気ぶりを裏付ける代名詞になっている。そんなソンギュンの最新主演ドラマ「検事内伝」が5月14日(木)より衛星劇場にて日本初放送される(14日の第1話は無料放送)。
■「コーヒープリンス1号店」でのハンソン役とOSTで一躍ブレイク!
間もなく45歳を迎えるイ・ソンギュンは、大学を中退して韓国の芸術学校で最難関とされる名門・韓国芸術総合学校演劇院出身という経歴の持ち主。2001年の人気ミュージカル「ロッキー・ホラー・ショー」でデビューするも、その後はヒット作に恵まれず、2007年に日本の名作ドラマの韓国版リメイク作「白い巨塔」で注目を集めた。そして同年、ブレイクを果たした彼の出世作といえば、「コーヒープリンス1号店」だ。
コン・ユ演じるハンギョルが経営するイケメン店員限定のカフェ"コーヒープリンス"が舞台となる本作は、放送後からロケ地が観光スポット化するなど社会現象を巻き起こしたラブコメ作品。その人気ぶりは日本にも波及しており、記憶に刻まれている韓流ドラマファンも多いのではないだろうか。
劇中では、ハンギョルと"男装"のヒロイン、ウンチャン(ユン・ウネ)との恋愛模様が中心ではあるものの、放送当時、ハンギョルとその人気を二分していたのが、イ・ソンギュン演じる音楽家ハンソン。大人の男の余裕を感じさせるスマートな立ち振る舞いはもちろん、挿入歌「海旅行」でその美声を披露したことで、さらに女性ファンのハートを掴んだといえるだろう。
■地味な庶民派キャラクターゆえに際立つ、イ・ソンギュンの実力とは?
その後はキャリアも順調で、新たな代表作「パスタ~恋が出来るまで~」(2010年)のほか、映画俳優としての地位も確立。特に『ソニはご機嫌ななめ』(2013年)など国際的評価の高いホン・サンス監督作の常連としても知られており、近年では自ら探偵稼業に乗り出す王様をコミカルに演じた時代劇「王様の事件手帖」(2017年)など役の幅も広がっている。
最新作「検事内伝」では検事・ソヌンを演じたソンギュン。『パラサイト 半地下の家族』のようなエリートと思いきや、今度は"平凡でさえないサラリーマン検事"に激変。検事たちの流罪地とまで呼ばれるジニョン支庁を舞台にした本作では、組織や人間関係にもまれながら奮闘するサラリーマン社会の縮図ともいうべき物語が展開する。
子育てとの両立に苦戦する母親検事、事件よりもプライベート重視の若者検事...その中で、ソンギュンは、日々の"サラメシ(サラリーマンの昼飯)"を頬張りながら日々の雑事に奮闘するソヌンを哀愁たっぷりに演じている。
魅惑の低音ボイスは、法廷シーンでの理路整然とした口調ばかりでなく、オフィスやランチの場で同僚たちと語り明かす雑談ですら、妙な説得力にあふれており、しみじみと心に沁みてくる。最たる才能も野心も持たず、自らの役割をただ一生懸命にこなし続けるソヌンは派手さのないキャラクターだが、それゆえにソンギュンの演技派俳優としての引き出しの多さを見せつけてくれるのだ。
文=渡辺敏樹(エディターズ・キャンプ)
放送情報
検事内伝 第1話無料放送
放送日時:2020年5月14日(木)23:00~
※毎週(木)23:00~(2話連続放送)
チャンネル:衛星劇場
王様の事件手帖
放送日時:2020年5月22日(金)23:15~
チャンネル:KBS World
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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