今年の1月に除隊を迎え、6月にカムバックしたEXOとしてだけでなく、初のソロアルバム『共感』を7月26日にリリースするなど、本格的なアーティスト活動を展開しているD.O.。同アルバムではアコースティックフォーク調のタイトル曲「Rose」や、リズミカルなギターとキャッチーなメロディのラブソング「I'm Gonna Love You」など、全8曲でその甘美かつ繊細な歌声を響かせている。さらに「Rose」の作詞も担当しており、持ち前の表現力を存分に発揮した。
歌手としての実力を見せているD.O.だが、表現者としてのポテンシャルの高さを語るうえで外せないのが、俳優としての活動だ。2014年から俳優業に挑戦すると、家庭に問題を抱える若者、軍隊に適応できない一等兵、記憶喪失した世子、サイコパスの犯罪者...と幅広い役柄になりきり、もはや"演技ドル"を通り越して俳優として高く評価されてきた。
そんなD.O.の俳優歴の中でも、特にポテンシャルが発揮されているのが『スウィング・キッズ』(2018年)だろう。8月8日(日)にムービープラスにて放送される本作は、日本でリメイクもされた『サニー 永遠の仲間たち』(2011年)などのカン・ヒョンチョルが監督を務め、朝鮮戦争下の捕虜収容所を舞台にタップダンスに情熱を傾ける寄せ集めチームの奮闘を描くヒューマンドラマだ。
1951年、韓国の巨済(コジェ)捕虜収容所のイメージアップのために結成された、国籍も身分も異なる戦争捕虜たちによるダンスチーム。時には衝突しあいながらも、チームの面々はダンスを通じて心を通わせていく。
北朝鮮の朝鮮人民軍と中国人民義勇軍が収容された巨済(コジェ)捕虜収容所は、共産主義か資本主義かで分かれた捕虜たちによる暴動や殺戮も起きた場所。本作はその歴史的背景を下敷きにしており、"戦争や人種差別が生む悲劇"という題材が極めてヘビーだ。しかし、ビートルズの「フリー・アズ・ア・バード(Free as a bird)」やデヴィッド・ボウイの「モダン・ラヴ(Modern Love)」といったキャラクターの感情とリンクした楽曲を重ね合わせてエンタメに昇華。悲劇と希望を対比させながら鮮やかに描き出す、ヒョンチョル監督らしさが光っている。
D.O.が演じるのは北朝鮮側の捕虜・ギス。米兵にも怯まずに立ち向かうやんちゃな性格ゆえに、周囲の捕虜たちから慕われている男だ。そんな彼が、かつてブロードウェイのタップダンサーだった米軍下士官のジャクソンとのダンスバトルを機にタップダンスにのめり込んでいく。
圧倒的なタップダンスの実力が必要とされる難役だが、そこはさすがトップアイドルのD.O.。培ってきたダンスの能力に加えて、半年間の猛特訓でタップを習得し、カメラが回っていないところでも常に床を蹴り続けていたというD.O.の努力が垣間見える。尋常じゃないスピードのステップワークなど、実際にタップダンサーでもあるジャクソン役のジャレッド・グライムスと並んで遜色のないキレキレなダンスを披露。ダンスを踊る喜びや楽しさを顔の表情から手足の先まで体全体を使いダイナミックに表現している。
同時に、南側の文化であるタップダンスを踊ることに対する後ろめたさや、捕虜と米兵が衝突を繰り返していくことに対するやりきれなさなど、北と南のイデオロギーに押さえつけられるギスの内面も繊細な表情で体現。物語中盤、そういった感情の積み重ねが限界に到達するギスが、抑圧から自由になりたいと感情を爆発させるダンスシーンは圧巻の一言だ。
時代に翻弄される愚直な主人公を持ち前の演技力と圧倒的な身体表現で演じきっているD.O.。ヒョンチョル監督に「この映画と出会う運命だった」と言わしめるほどのハマり役で、改めてハイスペックなD.O.の魅力に気づかされる。
文=HOMINIS編集部
放送情報
スウィング・キッズ
放送日時:2021年8月8日(日)16:00~
チャンネル:ムービープラス
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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