韓国映画界屈指の実力派、チョン・ユミとコン・ユ。衝撃の真実をつづる社会派映画『トガニ 幼き瞳の告発(2011年)、大ヒットを果たしたパニック映画の大作『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)と話題作で共演を重ねてきた彼らが、3度目のタッグにして初めて夫婦役を演じたのが、女性の生きづらさを映し出した『82年生まれ、キム・ジヨン』(2019年)だ。
8月15日(日)にWOWOWシネマにて放送される本作は、韓国で130万部突破のベストセラー小説を映画化したヒューマンドラマの秀作。チョン・ユミとコン・ユの見事な化学反応によって、リアルな夫婦の物語が誕生した。昨秋、日本公開された際にも、観る者の心を震わせ、大きな反響を呼び起こした。
共演した前2作でも相性の良さを感じさせていた2人だが、『82年生まれ、キム・ジヨン』で演じたのが、韓国ではごく一般的な日常を送る夫婦役。主人公となるのは、結婚・出産を機に仕事を辞め、育児と家事に追われるジヨン(チョン・ユミ)。ある日から彼女は他人が乗り移ったかのような言動をとるようになってしまい、夫のデヒョン(コン・ユ)が心配する中、ジヨンの感じてきた痛みや違和感が明らかになっていく。
ユミが、自分でも気付かぬうちに心が壊れていくジヨンの様子を繊細に演じ、目が離せない。女性としての生きづらさを知る少女時代を経て、就職しても男性と同じような出世の道は望めず、家庭に入ってからは、社会から切り離されたような感覚を味わうジヨン。再就職も困難を極めるなど、彼女が抱える感情は、女性ならばきっと誰もが一度は感じたことのある絶望や不安のようなものだ。
強い意志を宿した眼差しが印象的なユミが、誰かの妻、誰かの母ではなく、キム・ジヨンというひとりの女性の人生をどこまでも自然体の演技で表現している。だからこそ観客の心に響き、本作の公開時には、韓国女性のみならず日本でも、「まるで自分のことのようだと思い、涙が出た」と、ジヨンの葛藤を目にした観客からの共感の声が多数見受けられた。
一方、コン・ユ扮するデヒョンは、異変をきたす妻を心配する優しい夫だ。持ち前の誠実さを漂わせながら、説得力とともにデヒョンを演じている。その優しさがさらに妻を苦しめているという事実が、なんとも心苦しい。妻を見つめるデヒョンの表情には、恐ろしさや悲しみ、戸惑い、自責の念など複雑な感情が混ざり合い、それもまたリアルだ。
ジヨンの肩にそっと触れるデヒョン、2人が手に手を取って歩む様子など、壁にぶつかりながらも彼らの育んできた愛が見える点もすばらしく、チョン・ユミとコン・ユが起こした化学反応が、本作を地に足のついた力強い物語にしている。
チョン・ユミは「コン・ユという俳優が持っている情緒、感情を表現する繊細さがデヒョンをさらに深みのあるキャラクターにしてくれた」と語り、一方のコン・ユも「撮影現場でチョン・ユミさんに会った時、すでにキム・ジヨンだと思った。おかげで最初から演技に集中し、のめり込むことができた」とお互いへの並々ならぬ信頼感を吐露している。彼らの道が再び交差する日が、楽しみで仕方ない。
文=成田おり枝
放送情報
82年生まれ、キム・ジヨン
放送日時:2021年8月15日(日)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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