NHK総合にて放送され、改めて話題を集めている時代劇「ヘチ 王座への道」(2019年)。後の朝鮮王朝第21代王・英祖(ヨンジョ)である不遇の王子イ・グムの不屈の道のりを描いた同作で、正義への信念を滾らせる主人公・グム役を演じているのがチョン・イルだ。
これまでも「美賊イルジメ伝」(2009年)や「太陽を抱く月」(2012年)など数々の時代劇に出演してきたイルだが、涼やかな顔つきながら、忠臣や民衆の心を惹きつける強烈なカリスマ性をまとうグム役は、30代に突入にした彼にとって新たなチャレンジといえる難役だった。
イルにとって除隊後の復帰作であったこともあり、手に汗握るアクションシーンや長尺の演説シーンも、見ているこちらが息を飲むほどの気合いが感じられる。彼はこれまでも演技力が必要とされる時代劇で高い評価を得てきたが、名君と愛されるイ・グムを演じたことでまた一皮むけたという印象だ。
そんなイルの主演最新作は、KNTVで8月19日(木)に第1話が先行放送される「ポッサム-運命を盗む(原題)」。朝鮮時代第15代国王・光海君の統治下の時代を舞台に、寡婦を連れ去って再婚させる朝鮮時代の風習"ポッサム"をテーマに描くロマンス時代劇だ。
イルが演じるのは、ポッサムや泥棒などで生計を立てる男バウ。ある日、本来連れてくるはずだった女性と間違えて光海君の娘、翁主スギョン(クォン・ユリ/少女時代)を誘拐してしまったことから2人の運命は大きく変わることになる。
まず驚かされるのが、荒くれ男・バウに扮したイルの出で立ち。無造作に結ばれた長髪に無精ひげ、そして響くような低い声と、普段の清潔感あふれる姿とはかけ離れた男くさい風貌を見せている。さらに所作やアクションまでも力強く、まるで今までのイルとはまるで別人のようだ。
さらにバウは、妻が同じ村に住んでいた友人と駆け落ちし、現在は男手一つで息子のチャドルを育てているという役どころ。荒々しいバウでありながら、息子と面する時は瞳の奥に温もりを感じられるような父性を覗かせる。初めての父親役にして、「子供のためなら父親として何でもできる」という言葉に説得力が出せるのはイルの役作りの賜物だろう。
また、バウとスギョンの距離が少しずつ近づいていく様子も、今までのイルには無かった新鮮さ。怪我をしたスギョンを休ませる口実に「息子が疲れたみたいだから」と言ってみたり、スギョンのために買った靴を渡す時も「お手頃だった」と言いながら渡したり、ぶっきらぼうな性格のバウなりの優しさが、見ている者の胸を高鳴らせてくれるのだ。
「ヘチ 王座への道」でも圧倒的なカリスマ性という新たな一面を見せたイルだったが、今作では今までのイメージをガラリと変え、無骨だが地に足のついた男のカッコ良さを見せつけている。経験と年齢を重ね、急成長するイルの新たな代表作となるに違いない「ポッサム-運命を盗む(原題)」。見逃せない作品となりそうだ。
文=津金美雪
放送情報
ポッサム-運命を盗む(原題) 第1話先行放送
放送日時:2021年8月19日(木)20:00~
※レギュラー放送は9月10日(金)より毎週(金)20:00~(2話連続放送)
チャンネル:スカチャン1(KNTV801)、KNTV
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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