闘病生活から復帰し、本格的に活動を再開させてから約2年、待望の新作が続々と発表されているキム・ウビン。イ・ビョンホンや交際を公表している人気女優シン・ミナと共演することでも話題の「私たちのブルース」や、映画『MASTER/マスター』(2016年)のチョ・ウィソク監督との再タッグ作であり、ソン・スンホンと共演を果たす主演ドラマ「配達人 ~終末の救世主~」と、そのメンツだけでも期待が高まるビッグタイトルばかりだ。
そんなウビンが活動休止直前に出演し、"国民の初恋"と親しまれる人気女優ペ・スジとの共演でも話題を呼んだラブロマンスが「むやみに切なく」(2016年)。ウビンは人気絶頂のトップスター、ジュニョン役に扮し、彼自身が醸し出すカリスマ性を存分に発揮している。
2008年にモデルとしてキャリアをスタートさせたウビン。立っているだけで絵になるルックスはもちろん、優れた演技センスと心地よい低音ボイスで早い時期から俳優としても頭角を現してきた。
2012年に人気学園ドラマ"学校"シリーズの「ゆれながら咲く花(学校2013)」で成績優秀だが喧嘩っ早い転校生を演じて注目を浴びた後、「相続者たち」(2013年)の御曹司ヨンド役で本格ブレイク。IQ150の天才ながら幼い頃に母親に捨てられて育ったヨンドの孤独を繊細に表現し、主人公タン(イ・ミンホ)のライバルという立ち位置にもかかわらず視聴者の共感を集めた。
そして映画『MASTER/マスター』(2016年)では、イ・ビョンホン演じるカリスマ詐欺師・チン会長を追い詰めていく天才ハッカーのパクを好演。ビョンホンとカン・ドンウォンという先輩韓流スターとのトリプル主演で、彼らと肩を並べる活躍を見せた。
「むやみに切なく」は、その『MASTER/マスター』公開と同じく、活動休止直前となる2016年に放送。ウビンにとっても、初の本格的な恋愛ドラマであり、主人公となる余命宣告を受けたトップスター、ジュニョンを演じた。
"余命宣告"というシリアスな背景を踏まえて展開するのは、同級生で初恋の相手ウル(ペ・スジ)との切ないラブストーリー。絶望するジュニョンと、父親の死とその後の度重なる借金苦のせいで卑屈で現金な性格に変わってしまったウルの物語が、2人の過去のエピソードと並行して描かれていく。
ウビン本人がまとっている雰囲気からか、クールで知的な役柄の印象が強いが、本作で演じたジュニョンも賢く、孤高だ。
俳優としても歌手としても人気絶頂のジュニョンは、自分の役柄がクライマックスで死を迎える設定を嫌がり、「俺は死ねません」「台本を書き換えてください」とわがまま放題。そんなジュニョンに手を焼くスタッフたちの様子が描かれた後、実はジュニョン自身が"余命1年"の宣告を受けていることが明かされる。ウビン本人がまとっている雰囲気からか、クールで知的な役柄の印象が強いが、本作で演じたジュニョンも賢く、孤高だ。
だがジュニョンは、その事実を誰にも話さない。スタッフが口にする何気ない「頼むからおとなしく死んでくれよ」の言葉がまったく違って聴こえ、静かに涙を流すジュニョンに胸が締め付けられる。
孤独なジュニョンは再会したウルに惹かれていくが、変わってしまったウルは頑なで、心を開かない。その間にも、ジュニョンの人生のタイムリミットが迫り、病状も進行していく。"悔いを残したくない"と必死で生きるジュニョンの焦りと孤独を、ウビンが丹念に演じている。
奇しくも、この「むやみに切なく」放送直後にウビン自身も病気を公表。3年間の活動休止と闘病を経て、2020年4月に復帰した。ウビンが病気を克服し、表舞台に返り咲いた今、ジュニョンの物語はまた違った意味を伴い、胸に迫ってくる。ブランク後もオファーが絶えないウビンの俳優としての実力が堪能できる作品としても、押さえておきたい名作だ。
文=酒寄美智子
放送情報
むやみに切なく
放送日時:2022年4月13日(水)23:20~
※毎週(水)(木)23:20~
チャンネル:KBS World
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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