韓国中で愛された「キム・タック」役から12年、ホームドラマで本領発揮するユン・シユンの存在感

いつも笑顔で前向きな主人公・タック役が印象的だった国民的大ヒットドラマ「製パン王 キム・タック」(2010年)から12年。今では35歳となり、韓国で現在放送中の最新週末ドラマ「ヒョンジェは美しい(原題)」での愛嬌あふれる姿が注目を集めているユン・シユン。

6月18日(土)より早くも日本初放送を迎える本作だが、KBS Worldでは彼の出世作「製パン王 キム・タック」も、6月29日(水)より放送される。エネルギッシュなタック役と、爽やかさはそのままに年齢を重ねて落ち着いた魅力をまとったヒョンジェ役を同時に楽しめる絶好の機会となっている。

「製パン王 キム・タック」は韓国の放送局・KBSが制作したミニシリーズであり、コソン食品創業家の血を受け継ぐ孤独な青年、キム・タックの成長を描くヒューマンドラマ。

2009年に俳優デビューし、当時23歳だったシユンにとっては初めての主演作で、韓国での初放送時には最高視聴率49.3％という国民的大ヒットを記録。ドラマ人気と比例するように、逆境に明るく立ち向かう主人公タック役を溌溂と演じたシユンの注目度も急上昇し、一躍スターダムへと駆け上がった。

天才的な嗅覚と努力する才能を持ったタック。コソン食品の創業一家であるク家の後継者問題に巻き込まれ、幼い頃に愛する母と引き裂かれるも、生来の天真爛漫さと賢さ、正義感の強さを併せ持った青年へと成長。そんな複雑な生い立ちを背負うタックを、シユンが曇りのない笑顔で体現する。

第6話までは少年期で、シユン演じる青年タックが登場するのは第7話から。父親の顔を知らずに育つが、愛情深い母親との暮らしがしっかりと描かれているため、何者かに連れ去られて行方不明となった母への葛藤や、やがてク家を飛び出し、製パン界の生ける伝説・パルボン師匠の下で、パン作りの情熱へと気持ちを切り替えていく過程にも説得力がある。

辛い過去を乗り越えようと奮闘するタックが、パン作りに打ち込むひたむきな表情や、パン作りを褒められた時の子どものような無邪気な笑顔に惹きつけられるし、「諦めなければ母さんにも必ず会える」と母への複雑な思いを希望に変えるシーンの清々しさに胸がすく。そして、様々な苦悩や確執を乗り越えたタックが語る「今、信じられないほど幸せだ。1人じゃないし、パンがあるからね」という言葉の重みや、真っすぐな瞳が胸に迫ってくる。

同作で多くの支持を集めたシユンは、その後、軍隊の中でも最も訓練が厳しいことで知られる海兵隊での兵役期間を経て、時代劇「不滅の恋人」(2018年)や本格サスペンスアクション「トレイン」(2020年)などで従来のイメージを覆す新たな一面を開拓。そして、演技者として様々なキャリアを積み上げた彼は、同じKBS制作の最新主演作「ヒョンジェは美しい(原題)」で、原点回帰ともいうべき王道のホームドラマに挑んでいる。

「ヒョンジェは美しい(原題)」は、祖父から"最初に結婚した者にマンションを渡す"と提案された独身3兄弟の恋愛模様をコミカルに綴った家族の物語。シユンが演じた離婚専門弁護士の次男ヒョンジェは、聡明で何事もそつなくこなす一方で、家族にはめっぽう弱いという一面も。恋愛には縁遠かった彼が、依頼人のミレ(ペ・ダビン)に心ときめいてドギマギする姿も愛嬌たっぷりに描かれる。

「ヒョンジェは美しい(原題)」は年代を問わずに家族で楽しめるストーリーだが、シユンは制作発表会の席で、「『製パン王 キム・タック』はミニシリーズだったが週末ドラマの要素もあり、普遍的な家族愛を描く作品だった。週末ドラマである今回、僕は完璧な姿よりも精力的な姿をたくさん見せたい」とコメントし、再び家族がみんなで楽しめる作品を作りたいという意気込みを語っていた。「『ヒョンジェは美しい(原題)』制作発表会＆見どころSP」では、そんな彼の素顔や和気あいあいとした共演者との掛け合いも楽しむことができる。

韓国では早くも第4話で25.3％を記録するなど好調な数字を叩き出している「ヒョンジェは美しい(原題)」。まだあどけない表情を残していた「製パン王 キム・タック」との変化にも注目しながら、王道のホームドラマで発揮する演技者ユン・シユンの魅力を堪能したい。

文＝酒寄美智子

この記事の全ての画像を見る