世界にアジア人俳優の存在を知らしめ、アクション映画におけるマーシャルアーツ的な殺陣の重要性を世に知らしめた永遠のスター、ブルース・リー。今なお世界中で高い人気を誇り、多くの後進を生み出しただけでなく、アクション映画の新たな方向性を示した人物でありながらも、主演映画わずか5本、32歳の若さでこの世を去った。大きな足跡を残しながらも、早逝してしまったがゆえに彼は揺るぎない伝説になったと言えるだろう。
2023年には没後50年を迎えることなるが、リーの残した作品は、近年4Kリマスター化されることによって、より鮮明にその活躍を見ることができるようになった。今回は、彼の主演5作を追いながら、その伝説の足跡を振り返っていこう。
■武術家から俳優へと転身し、カンフー映画のムーブメントを生み出す!
1940年に生まれたブルース・リーは、13歳から5年間、香港で詠春拳の達人であり、のちに映画のモデルになる偉大な武術家イップ・マンのもとで武術を学ぶ。その後、18歳で単身渡米し、大学に通いながら道場を開いて中国武術の指導をはじめ、ここで独自の思想に基づいた新しい武術である、截拳道(ジークンドー)を創始する。そんななか、国際空手選手権大会で演武を行った姿がテレビ関係者の目に止まり、ヒーローもののテレビシリーズ「グリーン・ホーネット」にて準主役の日系アメリカ人、カトー役に抜擢。その人並み外れたキレのあるアクションと存在感が大きな話題となった。
これをきっかけにリーは、自身が主役となる連続テレビドラマ「燃えよ!カンフー」を企画するが、当時は東洋人がアメリカのテレビドラマの主役になることは、時代的にまだ叶わなかった。その一方で、芸能界的なつながりから、彼の道場にはスティーヴ・マックイーンやジェームズ・コバーンらハリウッド俳優やスポーツ選手らが通い、彼の門下生となっていた。
アメリカで道場主としては成功しながらも、俳優としては主演作を得ることができなかったリーは、香港の映画会社ゴールデン・ハーベストと契約して、香港へ帰還。そして、主演第1作となる『ドラゴン危機一発』(1971年)に出演する。
ちなみに、アメリカで名声を得ようとしているこの頃のリーを扱った映画が、近年2本公開されている。一つは、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットが共演した、クエンティン・タランティーノ監督作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年)。こちらでは、ハリウッド映画スタジオ界隈で、その腕っぷしの強さを披露していた若き日のリーをマイク・モーが演じている。もう一つは、ドニー・イェン主演の『イップ・マン 完結』(2019年)。こちらは、サンフランシスコに渡米したイップ・マンがかつての弟子と再会する形でチャン・クォックワン演じるリーが登場。ちなみに、どちらもフィクションであるため、時代背景はマッチしているが、事実とは大きく異なっている。
『ドラゴン危機一発』でリーは、香港からタイに住む従兄弟のもとに出稼ぎに来た主人公の青年チェン・チャオアンを演じている。彼が働く製氷工場は、経営者であるギャングのボスが麻薬密売のための隠れ蓑的に使っていた場所であり、その秘密に偶然触れた従兄弟たちが殺されてしまう。帰って来ない従兄弟たちの行方を追うなかで、チャオアンは、製氷工場に隠された真実を知り、従兄弟たちの死に怒りを爆発させるという物語となっている。
当初、リーは準主役の予定だったが、その存在感と身体能力の高さから主役に抜擢され、彼の伝説が幕を開けることになる。1対多数の戦いにおいて、見劣りしない彼の体さばきは現在の目から見てもほかの出演者たちから抜きん出ていた。観る者の度肝を抜くキレのあるアクションは大きな話題となり、公開されると当時の香港の映画興行記録を更新。本作はストーリーや演出面においては荒削りな印象が強いが、マイナス面の全てをリーによるアクションが払拭。本作の登場によって、それまで時代劇が中心だった香港のカンフー映画の流れを大きく変えるきっかけとなった。
この大ヒットを受けて、リーの魅力を前面に出す映画として、2作目となる『ドラゴン怒りの鉄拳』(1972年)が翌年に公開される。物語の舞台となるのは、20世紀初頭の上海。精武門の創始者である中国武術家が謎の死を遂げる。その死を聞いた愛弟子の陳真(リー)は、師匠の死に疑問を持ち行動を開始。敵対する日本人柔道場との熾烈な戦いが描かれる。
本作からリーは主演だけでなく武術指導や製作にも関わるようになり、前作の『ドラゴン危機一発』よりもアクション面でのパワーアップが見られる。本作では、その後のリーの代名詞となるヌンチャクや特徴的な怪鳥音が初登場しており、彼の才能が大きく開花した1作だと言えるだろう。そして、『ドラゴン怒りの鉄拳』は、『ドラゴン危機一発』の興収を破り、リーの名を不動の地位へと着かせることになった。
ちなみに、リーが演じた陳真というキャラクターは本作のために作られた架空の人物だが、本作での中国人への差別的な発言を打ち砕く強い精神を持つ人物というイメージによって中国では人気のキャラクターとなり、その後ジェット・リーやドニー・イェンが陳真を演じた作品も制作されている。
放送情報
燃えよドラゴン
放送日時:2022年9月10日(土)16:15~、12日(月)9:00~
ドラゴン怒りの鉄拳[4Kリマスター版]
放送日時:2022年9月4日(日)10:00~、10日(土)12:00~
ドラゴン危機一発[4Kリマスター版]
放送日時:2022年9月4日(日)8:00~、10日(土)10:00~
最後のブルース・リー/ドラゴンへの道[4Kリマスター版]
放送日時:2022年9月10日(土)14:15~、27日(火)11:30~
死亡遊戯[4Kリマスター版]
放送日時:2022年9月10日(土)18:45~、21日(水)0:00~
チャンネル:ムービープラス
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