『ドラゴン怒りの鉄拳』での成功に伴い、リーは自身が社長となる映画製作会社コンコルド・ピクチャーズを設立。その製作1作目にして、リーが監督、脚本、武術指導、主演を務めたのが、主演3作目となる『最後のブルース・リー/ドラゴンへの道』(1972年)だ。
イタリア・ローマの中華レストランの娘チャンは、地元ギャングによる地上げトラブルの解決を香港の弁護士に相談。しかし、弁護士がローマに来られなくなったため、代わりに従兄のトン・ロン(ブルース・リー)がやって来る。頼りない青年に見えたトンは武術の達人で、店に嫌がらせをするギャングを一蹴。しかし、それが引き金となりギャングたちの嫌がらせが激化し、トンはギャングの雇った用心棒たちとの戦いに身を投じていく。
前2作のシリアスで、殺伐とした雰囲気は鳴りを潜め、異文化交流的なコメディ要素や、少しずつ仲間たちと打ち解けるアットホームな雰囲気など、明るい作風で描かれている。その一方で、最大の見どころと言えるのは、コロッセオを舞台としたチャック・ノリス演じるアメリカ人空手家との一騎打ち。達人同士の鬼気迫る駆け引き、途中でトンがフットワークを活かして逆転に転じる流れなど、質の高いカンフー対空手の対決によって、彼が求めるアクション性がさらに極まったと言えるだろう。
■念願のハリウッド進出とあまりにも突然過ぎる死...
続いて、コンコルド・プロダクション製作にして、リーの監督作第2弾となる『死亡的遊戯』の撮影が1972年秋からスタートする。しかし、ハリウッドの大手映画会社ワーナー・ブラザースから合作映画製作の打診が入る。リーは、かつて挫折を味わったアメリカ映画界からの誘いと、念願の世界進出となる作品への主演が叶うということで、撮影が始まったばかりの『死亡的遊戯』の製作を中止し、合作映画である『燃えよドラゴン』(1973年)の現場に入る。
物語の舞台となるのは、1970年代の香港。悪の道に手を染めて少林寺を破門となったハンは、自身の所有する孤島で阿片を精製するなどして、その力を蓄えていた。ハンは島で3年に一度、腕利きを集めた武術トーナメントを開催。少林寺の武術の達人であるリー(リー)は、国際情報局の依頼を受ける。少林寺の名に泥を塗り、自身の姉を死に追いやったハンへの復讐を誓ったリーは、島に渡ってトーナメントに参加する。
新鋭であるロバート・クローズが監督を務めているが、映画の製作にはリーも大きく関わっており、クレジットされている武術指導に留まらず、脚本の変更や撮影にも口を出すことで共同監督的な立場に身を置き、映画の完成度を高めるために並々ならぬエネルギーを注いでいる。
その結果、アクション的にはそれまでのリー主演作の総決算と言えるレベルにまで練り上げられており、撮影予算の高さやエキストラの多さ、セットのクオリティや撮影状況も含めて、まさにスターダムに駆け上ってきた、リー映画の最高傑作と呼べる内容となっていた。
撮影は全編香港で行われており、当時ゴールデン・ハーベストで役者の卵として、スタントマンやエキストラをしていた、ジャッキー・チェン、サモ・ハン・キンポー、ユン・ピョウらがハンの手下のチンピラ役などで出演しており、この作品でのリーとの関わり合いによって、次代の香港アクションスターへのバトンが繋がったという意味でも重要な1作となっている。また、権力者が開く武闘家たちによるトーナメントというシチュエーションは、この作品以降、多くの格闘マンガやアニメ、映画などで取り上げられるようになり、エンタメ的な意味でも大きな足跡を残したとも言える。
放送情報
燃えよドラゴン
放送日時:2022年9月10日(土)16:15~、12日(月)9:00~
ドラゴン怒りの鉄拳[4Kリマスター版]
放送日時:2022年9月4日(日)10:00~、10日(土)12:00~
ドラゴン危機一発[4Kリマスター版]
放送日時:2022年9月4日(日)8:00~、10日(土)10:00~
最後のブルース・リー/ドラゴンへの道[4Kリマスター版]
放送日時:2022年9月10日(土)14:15~、27日(火)11:30~
死亡遊戯[4Kリマスター版]
放送日時:2022年9月10日(土)18:45~、21日(水)0:00~
チャンネル:ムービープラス
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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