弘中綾香「どちらも大切にしたい」 『たぶん、ターニングポイント』が描く母と自分の両立

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出産・育児エッセイ『たぶん、ターニングポイント』を出版した弘中綾香
出産・育児エッセイ『たぶん、ターニングポイント』を出版した弘中綾香

――本の中でも壮絶な過程が描かれていましたが、現在は母親としての生活は落ち着いてきましたか?

「落ち着いてきました。大きいのは、やっぱり喋れるようになったことですね。本を書いていた頃はまだ喋れなかったので、娘のやりたいこと、体調や機嫌を、こちらが想像して推し量って対応する毎日だったんです。でも喋れるようになってくれると、"パン食べたい""滑り台行きたい"みたいに言葉で伝えてくれるので、そこに応えればいいので、もちろん全部は叶えられないですけど、格段に楽になりました」

――2年で本当に大きく変わるんですね。改めて、母親になる過程、あるいはその期間でいちばん大変だったことを教えていただけますか?

「メンタルの保ち方、自分の機嫌の保ち方が、いちばん難しかったです。これまでの人生で、落ち込むことはあっても、自分でどうにもならないほど不調になる時期って、あまりなくて。友達に相談したり、発散したりすれば、わりと持ち直せるタイプだったんですよ。でも出産後は、ホルモンバランスの乱れもあって、自分ではどうしようもできないメンタルのデコボコが出てきた。ハッピーが増えるというより、めそめそしてしまうというか、後ろ向きになる。"なんでこんなことができないんだろう""なんで私ばっかりこんなに大変なんだろう"みたいな、これまであまり抱かなかった感情が増えて。それが、どうしようもできないことだと分かっていても、当時は受け止められなくて、いちばんしんどかったです。体が痛い、疲れている、寝られない、というのももちろんあるんですけど、それ以上にメンタルのほうがきつかった。打つ手がない、みたいな感覚が初めてで」

――そういうとき、ご自身の感情とはどう向き合っていたんでしょうか?

「今思えば、あれは自分らしくなかったし、自分じゃなかったな、と思えるんですけど、渦中にいるとそうは思えないんですよね。それがずっと続くんだとか、この子が大きくなるまでずっとこうなんだとか、極端なところまで考えてしまって。向き合うというより、ただ時間が過ぎた、という感じです。保育園に入れて、身体的にも距離ができたこと、仕事復帰したこともあって、ようやく抜けた。結果的には、時間が解決したところが大きいですね」

――保育園のお話でいうと、本の中では「0歳から預けること」への反応も描かれていました。いまでも賛否が出るテーマだと思いますが、実感としてはどうですか?

「私の世代だと、平成初期は3歳から幼稚園、6歳から小学校、という流れが一般的で、働いている人が今より少なかったのかもしれません。保育園に入れるとしても1〜2歳から、という感覚の人も多い。だから0歳から預けると、いろいろ言われたりもするんですよね。言っている本人は"言っているつもり"がない場合もあるんですけど、私がネガティブに受け取ってしまう、という面も含めて。ただ、今も賛否はありますけど、変わってきてもいると思います。会社員の方なら1年くらい産休が取れる制度もあるので、1歳から預けられる人も多いでしょうし、選択肢は増えてきている。私みたいに仕事がないとしんどいというタイプは早めに預けることもあるのかな、と感じます」

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作品情報

『たぶん、ターニングポイント』(朝日新聞出版)
定価:1540円(税込)
発売日:2026年1月20日

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