これが佐藤健の真骨頂!映画「カノジョは噓を愛しすぎてる」で見せるロートーンの芝居

(C)2013 青木琴美・小学館/「カノジョは嘘を愛しすぎてる」製作委員会

秋は、誰もが認める音楽の天才でありながらビジネスとしての音楽を嫌っており、「CRUDE PLAY」デビュー直前で裏方に転身したという過去がある。そして、「売れてこそ音楽」という持論を有するプロデューサー・高樹(反町隆史)のやり方に反感を抱きながらも、同級生だったバンド仲間のために曲を書き続けているのだが、佐藤の役作りがドンピシャで見事にハマっている。というのも、佐藤は「何か辛い過去や大きな悩みを抱えながらもそれを表に出さない役」を演じることにかけては群を抜いており、彼の右に出る者がいないと言っても過言ではないからだ。彼の数ある代表作や印象に残っている役はどれもそういった役柄で、内に秘めた悲しみや苦しみを抑えながら日常を送る人物描写が圧倒的に上手い。

同作の秋も、ビジネスとして音楽に嫌気がさしていながらも、作り続けないといけない葛藤や、思い描いた自分でいられない自己嫌悪などを抱えているのだが、表立ってそれを見せない。ふとした表情のかげり、目線を外す速度など、わずかなアクションの積み重ねを通して、雰囲気としてじんわりと漂わせている。そういう「ロートーン」の芝居で物悲しいオーラを纏うことで、役の内なる心情を表している。さらには、そういう人物が抱えきれない事態に直面し、感情を爆発させる場面においても、それまでのオーラが「前振り」となって、より濃いギャップを生み出して視聴者の心を揺さぶる効果を生み出している。

加えて、全てを手に入れているように見えながらも、何も手に入れていないような虚無感の中で生きる秋、理子に出会ったことで何かが変わった秋、愛故に苦渋の決断をする秋など、ストーリーが進むにつれて無意識に変わっていく内面の表現も秀逸であることも見逃せないポイントだ。

主人公の心の変遷に心を揺さぶられながら、佐藤の真骨頂ともいえる「ロートーン」の芝居の奥深さも堪能してほしい。

文=原田健

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放送情報

カノジョは噓を愛しすぎてる
放送日時:2022年1月24日(火)17:15~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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