映画版には一路の両親にまつわるオリジナルストーリーが加えられ、死者のために奮闘する主人公がやがて両親の過去を知り、家族の絆を新たにしていく姿を感動的に描き出している。オリジナルストーリーを加えながらも、愛犬ジロ、桂ちゃんのハムカツなど、原作やアニメでおなじみのモチーフもたっぷり登場。ほのぼのとして雰囲気に包まれなら、笑いと共に物語展開していくファンタジーコメディの良作だ。
主人公を演じる須賀健太にとっては、子役時代の集大成的な作品という印象だ。快活でみずみずしさと愛おしさを感じさせる演技が秀逸で、ポテンシャルを感じさせる。母親役の篠原もパワフルかつ、時に繊細さを感じさせる巧みな演技により抜群の存在感を発揮。父親役である西村の抑えた演技も好感が持てる。また、北村が醸し出す独特な空気感もクセになる魅力で、彼が稀有な俳優であることを本作で再認識できた。
監督は、「池中玄太80キロ」など人気TVドラマの演出を手掛けた水田伸生。本作は彼の映画デビュー作となった。日本の原風景が残る漁港の田舎町と最新のCGを融合させたノスタルジックな映像美も必見である。また、主題歌「愛しさと心の壁」を人気ユニットのサンボマスターが歌ったことも興味深い。
須賀は子役時代のイメージを払拭できずに悩んだ時期もあったらしいが、近年では悪役にも挑戦するなど演技の幅を広げて俳優としても成長。近年では、清原果耶主演の「霊媒探偵・城塚翡翠」(日本テレビ系)シリーズでの刑事役などでも活躍している。ちなみに同作の主人公も霊が見えるという設定だった。
忙しい日常の中で忘れてしまいがちな、家族の絆の尊さをはじめ、愛する人への優しい思いにそっと気づかせてくれるような良作だけに、須賀や篠原のファンはもちろん、未見の人はこの機会にぜひおすすめしたい映画である。
文=渡辺敏樹
放送情報
花田少年史 幽霊と秘密のトンネル
放送日時:2023年4月27日(月)06:50~
放送チャンネル:WOWOW4K
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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