横浜流星の瑞々しい演技が素晴らしい!2020年本屋大賞に輝いた小説を原作とした映画「線は、僕を描く」

(C)砥上裕將/講談社 (C)2022映画「線は、僕を描く」製作委員会

アルバイト先での出会いをきっかけに水墨画を学ぶことになり、その世界に魅了されていく。温かな人々と触れ合いながら内に秘めた水墨画の才能を開花させていき、やや強引な巨匠のペースに乗せられながらも、幼い子どものように瞳を輝かせて筆を走らせる。その奥深さを身をもって知り、驚きと喜びを感じながら没入していく様を生き生きと演じた。次第に明らかになっていく霜介の抱える過去。後悔と自責の念に苛まれ、固く閉ざした心と向き合わなければ、自分の線を描くことはできない。憂いを帯びた瞳に覚悟が生まれた時、真っ白な紙にどんな線が描かれるのか。横浜と霜介が重なっていくように、研ぎ澄まされていく心が繊細に映し出された。

霜介にライバル心を燃やす篠田湖山の孫・千瑛には、清原果耶が起用された。2015年に女優デビューを果たし、2018年の主演ドラマ「透明なゆりかご」での演技が高い評価を受ける。2021年連続テレビ小説「おかえりモネ」ではヒロインを務め上げた。本作では、主人公の霜介よりも年下だが絵師としては大先輩という役どころ。美しすぎる絵師と評されるも、水墨画の楽しみを見失い、心を閉ざしている。実年齢よりも大人びて見える清原が、その絶妙な距離感で演じる。落ち着いた雰囲気を纏いながら、偉大な祖父を持つ千瑛が抱える焦燥感や嫉妬もリアルに表現した。また、どこか浮世離れした水墨画界の巨匠・湖山に扮する三浦友和や、その一番弟子で気の良い兄貴のような西濱湖峰を演じる江口洋介らベテラン勢も、役柄同様に彼らを見守るように優しく愛情あふれる演技で包み込む。

横浜ら実力派キャストとスタッフによって美しい原作の世界観、喪失からの再生の物語が見事に描き出された。水墨画との出会いが生きる力となって、人生を変えていく。真摯に向き合う美しい横顔、力強く温かい線からは馥郁とした墨の香りが漂ってくるようだった。

文=中川菜都美

この記事の全ての画像を見る

放送情報

線は、僕を描く
放送日時:6月24日(土)20:00~ほか
チャンネル:WOWOWシネマ

※放送スケジュールは変更になる場合があります

詳しくはこちら

キャンペーンバナー

関連記事

記事の画像

記事に関するワード

関連人物