終戦後の日本に希望を与えた大スター!美空ひばりの活躍に初期作から迫る

伊豆を訪れた青年が旅芸人の踊子に恋をする『伊豆の踊子(1954年)』
伊豆を訪れた青年が旅芸人の踊子に恋をする『伊豆の踊子(1954年)』

(C)1954松竹株式会社

『伊豆の踊子(1954年)』は、川端康成の同名小説の二度目の映画化。昭和の初め。旧一高生の水原(石浜朗)が修善寺に滞在中の先輩を訪ね、その道中で旅芸人の一行と知り合う。一行の踊子・かおる(美空)に惹かれた水原は、湯ケ野温泉を経て、下田まで一行と旅をするようになる。水原とかおるの何気ない触れ合いの中に、初恋のときめきや旅芸人を差別する当時の風潮、伊豆を巡る旅情を盛り込みながら、野村芳太郎監督が瑞々しい青春映画に仕上げた。

美空はかおるを演じた時、17歳。彼女としては子役から少女へと脱皮を図った意欲作で、すでに大スターの貫禄も持ち合わせていたが、ここでは可憐な踊子になりきってみせた。「伊豆の踊子」は1933年の田中絹代主演版をはじめ計6回映画化されているが、美空版がヒットしたことで、この題材は青春スターの登竜門になった。彼女の後には鰐淵晴子(出演時15歳)、吉永小百合(同18歳)、内藤洋子(同16歳)、山口百恵(同15歳)が、かおるを演じている。

美空が子役から少女へと成長し、新たなステップを踏んだ意欲作(『伊豆の踊子(1954年)』)
美空が子役から少女へと成長し、新たなステップを踏んだ意欲作(『伊豆の踊子(1954年)』)

(C)1954松竹株式会社

1952年に歌手デビューした江利チエミ、1953年デビューの雪村いづみが天才少女歌手として注目され、美空を含めて同じ歳の彼女たちは「三人娘」として人気を集めた。その3人が初共演したのが『ジャンケン娘』で、その後のアイドル映画に影響を与えた大ヒット作である。女子高生のルリ(美空)と由美(江利)が京都へ修学旅行に向かい、舞妓の雛菊(雪村)と出会う。やがて東京に戻ったルリと由美のところへ雛菊がやって来て、京都の座敷で会った大学生を捜してほしいと頼む。この大学生が由美のことが好きで、雛菊は彼のことを諦める。一方、ルリはずっと会うことのなかった、外交官の父親と日本舞踊の発表会で再会する。

美空と江利チエミ、雪村いづみの天才少女歌手3人が初めて共演した『ジャンケン娘』
美空と江利チエミ、雪村いづみの天才少女歌手3人が初めて共演した『ジャンケン娘』

(C)1955 東宝

三人娘の恋と人生模様を絡めながら、彼女たちの歌を聴かせるミュージカルタッチの作品になっている。その後も3人は、『ロマンス娘』(1956年)、『大当り三色娘』(1957年)、『ひばり・チエミ・いづみ 三人よれば』(1964年)で共演。各々が歌手、女優としてトップスターの道を歩んでいった。

三人娘の人生模様をミュージカルタッチで描く『ジャンケン娘』
三人娘の人生模様をミュージカルタッチで描く『ジャンケン娘』

(C)1955 東宝

『花形歌手 七つの歌』は、短編の歌謡コメディ。花形歌手のヒットソングが吹き込まれたテープレコーダーが盗まれたことから起こる騒動を描いているが、劇中では美空をはじめ、江利チエミ、神楽坂はん子、近江敏郎、田端義夫、津村謙、越路吹雪という当時人気の歌手7人が歌を披露する、音楽ファンにも必見の作品だ。

7人の人気歌手が歌声を披露する音楽ファン必見の『花形歌手 七つの歌』
7人の人気歌手が歌声を披露する音楽ファン必見の『花形歌手 七つの歌』

(C)KADOKAWA 1953

いずれも10代にして、すでにアーティストとして完成されていた美空ひばりの非凡な才能を堪能できる娯楽作ばかり。伝説のスターの真価を、その目で確かめてほしい。

文=金澤誠

金澤誠●映画ライター。日本映画を主に、「キネマ旬報」、時事通信、劇場パンフレットなどで執筆。これまで1万人以上の映画人に取材している。「日刊ゲンダイ」誌上で「新・映画道楽 体験的女優論 スタジオジブリ鈴木敏夫」を連載中。また取材・構成を手掛けた「音が語る、日本映画の黄金時代」(河出書房新社刊)が発売中。

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放送情報

悲しき口笛
放送日時:2023年6月15日(木)19:00~
東京キッド
放送日時:2023年6月16日(金)19:00~
伊豆の踊子(1954年)
放送日時:2023年6月17日(土)19:00~
花形歌手 七つの歌
放送日時:2023年6月15日(木)20:40~、28日(水)8:30~
ジャンケン娘
放送日時:2023年6月18日(日)19:00~、30日(金)8:30~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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