――松山さんはこれまでも様々な映画やドラマに出演されてきて、それこそ前田監督が手掛けた『ロストケア』ではシリアスな世界観にも挑戦しています。シリアスな作品とコメディ作品とでは役作りに対する向き合い方も変わってくるものなのでしょうか?
「そこはあまりないですね。やっぱり台本があって、セットがあって、衣装やメイクがあって、共演者がいて、その場所によって空気って全然違うじゃないですか。僕はただそれに乗っかっているだけなんですよね。というのも、自分からシリアスな空気感やコメディの空気感みたいなものを出すとすごくエネルギーを使って疲れるので嫌なんです(笑)。ということもあって、みなさんが作ってくれた道を僕は歩いているような感じですね」
――主演を務めた神木隆之介さんとは『ノイズ』でも共演されていますよね。神木さんについてはどのような印象を持っていますか?
「誰とでも会話ができる人。コミュニケーション能力が高いし、何よりも一緒にいると安心しますね。神木くんと話していると、年上だとか、年下だとか、女性だとか、男性だとか、そういうことは関係なく、人をまっすぐ見てくれているなと感じます。具体的な話でいうと、僕は神木くんとはよくアニメの話をするんですよ。「なんか面白いアニメあった?」って神木くんに聞くと必ず教えてくれるんです(笑)。主演としての気遣いや緊張、気負いみたいなものは絶対に感じていたと思うんですけど、彼はあんまりそういうものも表に出さないですし、本当にリラックスしている感じがあったので、すごく安心しました」
――神木さんは役作りに関して相談などはありましたか?
「最初に『どんな感じでやってるの?』と聞いたときに、『時代劇っぽくはやってないです』という会話があったくらいですね。僕はそんなに出番が多くなかったので、遊びに来たような感覚で楽しんで演じました」
――本作には今でいうSDGsやリサイクルといったテーマが内在していますが、お金やモノがないからこそみんなで知恵を出して工夫する先人たちの考え方に関して、松山さんはどう感じられますか?
「本来は製品の寿命みたいなものってほとんどないんですよね。でも、普通は服が破けたら買い替えたりとか、匂いが取れないから捨てたりしますよね。生地としてはまだまだ使えるのにも関わらず。当時って今とは違って何十年も使い続けるというのが当たり前な感覚で、使えなくなっても直して使い続けることも多いんです。僕もこの作品を見ていて、昔には存在していたものが新しい価値観のせいで忘れ去られてしまうことへの危機感を感じましたし、そこは自分の中で取り戻したいなと思っています。そういう意味でも色々と思い出させてくれたり、ハッと気づかせてくれたりした作品になりましたね」
――本作では小四郎が廃れていた塩引き鮭を復活させるというシーンもありましたよね。
「塩引き鮭を復活させるというのはすごいなと思いました。やっぱり今の日本では伝統工芸や伝統美術というのは失われつつあって。それを小四郎は色々な付加価値をつけたり、いろんな仕組みを作って、みんながきちんと働ける場所を作りつつ復活させていく。さらにブランディングもできているわけですからね。今の日本ではそうした技術が海外からの輸入で賄われてたりとかもするじゃないですか。そうやってどんどん日本の伝統が失われてく部分もあるので、日本で元々職人をやっていた人たちをどういう風に復活させるのか、また伝統文化をどうやって成立させていくのかということはこれから考えたいなと思うし、日本の課題なんじゃないかなと思います」
取材・文=川崎龍也
Styling=五十嵐 堂寿
HAIR&MAKE-UP=勇見 勝彦(THYMON Inc.)
パンツ ¥49,500(イーストハーバーサープラス/エスディーアイ)、
モミジ アーティストTシャツ with ささきしの ¥22,000(momiji/オーロラ)
他私物
公開情報
映画『大名倒産』
2023年6月23日(金)公開
監督:前田哲
脚本:丑尾健太郎 稲葉一広
出演:神木隆之介 杉咲花 松山ケンイチ 小日向文世 小手伸也 桜田通 宮﨑あおい 浅野忠信 佐藤浩市
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/daimyo-tosan/
© 2023映画「大名倒産」製作委員会
詳しくはこちら