吹奏楽部に入部した大義、斗真、秋田豪(前田航基)、田崎洋一(若林時英)の仲良し4人組は、応援団と一緒に"YOSAKOIソーラン"の踊りに参加させられることになる。そこで大義は20キロもある巨大フラッグを振る応援団の役をしてみたいと言うものの、顧問の高橋先生には「人に終わりがあるように部活にも高校生活にも終わりがある。だから、今しかない時間を大事にしろ」と反対され、たしなめられる。しかし、熱くて真っ直ぐな大義は、吹奏楽も旗振りも諦めない。
その一方で、怪我で野球ができなくなり落ち込んでいる仲間を鼓舞するために、大義は応援曲を作ることを提案。吹奏楽を続けるか悩んでいる親友の斗真の家に押しかけて曲作りを手伝ってもらい、鍵盤を弾いて作り上げたのが「市船soul」だ。「野球部の応援歌にしたら、絶対に勝てる」と自信満々な大義の背中をさらに押したのが高橋先生。吹奏楽部の部員同士が揉めた時にも「あと4ヶ月でお前らは(卒業するから)ここからいなくなる。どうする?」と、常に"戻らない今"を生徒に突きつける高橋先生は、後の大義の人生を支えた存在となった。
映画の中で高橋先生が「まるで昭和の青春だな」と部員たちを見て笑うシーンがあるが、まさにその言葉通り、映像にもセリフにも、どこか懐かしく感じられるような"青春感"が溢れている。今しかない日々を全力で生きる主人公を演じる神尾の一挙一動がきらきらと眩しい。
■最後まで病と闘い、音楽と共に生ききった大義に涙
大学生になり、恋人の夏月(福本莉子)と充実した日々を過ごしていた大義だったが、ある日、病院で癌であることを宣告される。手術を受けて、20歳の誕生日に退院することが出来た大義は、ライブハウスでトロンボーンを演奏したり、後輩の野球の試合を観に行き、高橋先生から定期演奏会で演奏する曲の作曲を依頼されたりするが、楽しい日々は長くは続かず、脳に癌が転移したため、再び手術を受けることに。
そんな中でも作曲に没頭する大義を夏月は心配するが、「明日なんて来るかどうかわからない」と自分の時間は音楽を作るためにあると断言する大義。斗真に支えてもらわないと歩けない身体で母校に楽譜を渡しに行き、まだうまく旗を振れない後輩と接する場面は印象深く、やつれた顔が一変、高校生のように笑う神尾の演技が秀逸だ。
恐怖に潰されそうになっても立ち上がる勇気をくれたのは高橋先生の教えであり、先生もまた大義の生きざまに教えられる。そんな高橋先生の人間性を深みのある演技で見せる佐藤も素晴らしい。先生の呼びかけで告別式に集まった吹奏楽部員はなんと164人。そこで「市船soul」の演奏で盛大に送り出されたのも実話である。
音楽に向き合い、熱い人生を生きた主人公・大義を眩しくも等身大で体現する神尾の演技にも注目して見たい作品になっている。
文=山本弘子
放送情報
20歳のソウル
放送日時:2023年8月4日(金)10:30~
チャンネル:WOWOW4K
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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