ディーン・フジオカが「第2の故郷・インドネシア」で見せた、自然に溶け込む不思議なオーラ

「海を駆ける」
「海を駆ける」

(C)2018 "The Man from the Sea" FILM PARTNERS

謎の男・ラウを演じたのが、当時、NHK連続テレビ小説の第93作「あさが来た」(2015年)で大ブレイクを果たしていたディーン。青く美しい海辺に突然現れた彼は、名前も国籍も何も分からない。それでも怯えたり焦ったりすることもなく、ただ静かに優しく微笑んでいる。性別を超越した美しさにミステリアスな雰囲気を纏う。

幼な子のようにピュアな無邪気さを湛える瞳は、どこか遠くを見つめている。人間に慣れていないかのようなぎこちない動きをしながら、多くは語らないが日本語やインドネシア語に英語まで使い分ける。どこにも何にも属さない人智を超えた存在のような難役を担うディーンの静かな演技が光る。何の違和感もなく、自然と溶け込む。その不思議なオーラにただただ圧倒された。

「海を駆ける」
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(C)2018 "The Man from the Sea" FILM PARTNERS

また、ラウに関わる人々にも実力派が起用された。深田監督とは「淵に立つ」に続き3度目のタッグとなる太賀をはじめ、鶴田真由や阿部純子ら日本人キャストも、それぞれのキャラクターを好演した。特に太賀と鶴田は現地に暮らす日系人という役柄ゆえ、インドネシア語での膨大なセリフを習得すべく短期間で猛特訓を重ね、撮影中も熱心に練習を続けていたという。「鳥肌が立った」とディーンが称賛するほど見事なインドネシア語を披露した2人の自然な佇まいにも注目したい。

「海を駆ける」
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(C)2018 "The Man from the Sea" FILM PARTNERS

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カンヌに見出された才能・深田監督が、7年の歳月を費やしたオリジナル脚本による渾身の衝撃作。傷を抱える街や人、様々なバックグラウンドを持つ若者たちの瑞々しい会話、優しく穏やかに彼らを見守る母の温もり。しかし、そのすぐ隣には人間の力など遠く及ばない存在がある。理由もなく命さえも奪いながら癒しや恵みをもたらす大いなる自然、時に不条理な人生の残酷さと美しさ。人間の姿をした何者かを演じたディーンの静かな微笑みに、その意味を深く考えさせられる。

文=中川菜都美

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放送情報

海を駆ける
放送日時:2023年7月29日(土)21:45~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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