時折見せる愛くるしい表情や、じっと忍を見つめる怖い表情を見ていると、千秋が何を考えているのか、何を思って忍に強引にアプローチしているのかが、つい知りたくなってしまう。そしてそう思ってしまうのは、板垣が演じる橘千秋という人物に惹き込まれているからなのだろう。
話が進むに従い、千秋が抱えている心の闇、忍の家族との関係などが明らかになってゆく。自分にとって救いとなった漫画を描いたのが忍だったとわかった時の涙。自分と自分の母親の過去を明らかにした時の、心の底に渦巻く悲しみが伝わる眼差し。要所となる場面で板垣が見せる、魂をきつく絞るような渾身の演技には心を打たれる。
同時に、悲しみを抱えたまま歩道橋の上を歩いたり、物憂げな表情で苦手なコーヒーを啜ったりするシーンなどでは、板垣が持つ若さと美しさが全面に押し出される。よくある大人同士の"不倫ドラマ"ではなく、18歳もの歳の差がある2人を描いた本作で、遠慮なく若さと愛らしさ、そして葛藤を飛び散らせる千秋の存在は実に新鮮に映る。そして、それによって物語に引き込まれてしまうのは、やはり俳優・板垣李光人の力量によるものなのだろう。
やがて千秋は忍に心を寄せ、忍は千秋を好きになってゆく。自らの思いと現実の狭間で揺れながら、2人はどんな選択をし、どんな未来へ向かってゆくのか。板垣の渾身の演技とともに、最後までじっくりとお楽しみいただきたい。
文=堀慎二郎
放送情報
シジュウカラ
放送日時:2023年8月20日(日)1:30~
チャンネル:ホームドラマチャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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