緒形拳田中裕子西田敏行がユーモラスな演技を見せる映画「北斎漫画」

(C)1981松竹株式会社

幼いときに幕府御用達の鏡磨師、中島伊勢の養子となり、絵師の弟子として修行を積むものの素行の悪さで破門されてばかりの鉄蔵は、下駄屋の婿養子の佐七(後の馬琴)の家にお栄と居候している。描きたいものが見つかったら、後先考えず、鉄砲玉のように飛んでいってしまう鉄蔵は芸術家気質のロクデナシ。偶然、出会ったツンデレの美女、お直に"夕立が来たらずぶ濡れになって歩き出し、いつのまにか駆け出す。そうなったら、もうどこに向かっているかわからない"とまくし立てるシーンがあるが、まさに鉄蔵の生き方だ。衝動的な鉄蔵と対照的な性格なのが親友の佐七(西田敏行)。年上の女房の尻に敷かれながら、コツコツお金を貯め、滝沢馬琴の名で読み本を出すことを夢見ている。

お直に傷心な鉄蔵のことを「大した女でもないのに逃げられたとなると相当、男心がむしばまれるんだよな」とバッサリ斬るお栄は生意気で聡明。大人になってからは陰で北斎を支え、春画が描けなくなって落ち込む姿を見ていられず、父のために身体を張る。最強のバディである親子の波乱万丈の人生を緒形と田中がパワフルかつユーモラスに体現している。

■ヨレヨレになっても創作意欲が尽きない北斎の弾丸人生

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お栄は曲亭馬琴としてすっかり有名になった佐七のもとを訪ね、お金を借りに来るが、北斎は歳とっても相変わらずの格好つけ男。お金を持って娘を置いて、富士の絵を描きにひとりで旅に出てしまう。それで描き上げたのが有名な「冨嶽三十六景」だ。生涯、お金には恵まれず浅草の長屋にお栄と住んでいる北斎はヨレヨレになり、裕福な暮らしをしている馬琴はボケ老人に。それでもお栄が連れてきた美女をモデルに有名な「蛸と海女」を描き上げ、「人間、誰だって魔性を持ってる」と俄然やる気になる北斎の尽きることのない情熱に圧倒される。全員が年老いた後半はコントのような面白さもあるが、変わらない北斎と馬琴の友情、お栄の心に秘めた恋も描かれ、ヒューマンドラマとしても味わい深い。と同時に名優たちの若き日の共演が貴重すぎる映画だ。

文=山本弘子

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放送情報

北斎漫画
放送日時:10月3日(火)00:30~
放送チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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