一方の信彦は、牢獄らしき場所に幽閉され、髪も髭も伸びるがまま。実はこの時、怪人を生み出す源となる"創世王"の命が尽きようとしていて、怪人たちの政党"ゴルゴム党"は新たな創世王を誕生させるために必要なキングストーンを探していた。ゴルゴム党のメンバーにキングストーンのありかを聞かれても、あざ笑うように拒否する信彦の声はよく響き、何か強い意志さえ感じるほどだ。
鬱屈とした光太郎と、囚われながらも意志を持ち続ける信彦。冒頭の2人の不遇な状況や心情を目や声で伝えてくる西島と中村の演技はさすがと言えるだろう。
そして、キングストーンの捜索が本格化したことをきっかけに、2人もまた動き出す。光太郎はキングストーンを持つ葵を守るために戦い、信彦も怪人たちを守るために戦うようになる。
光太郎は葵と過ごす時間の中で笑顔を見せるようになり、葵を優しい声で包んだりもする。話が進むごとに表情が戻り、同時に光太郎の意志が固まっていく様子も伝わってくる。第5話で葵が罠に落ちた時の怒りの表情には、その力強さに圧倒されるほどだ。
信彦の方は揺るぎない強い意志を持ち続け、怪人たちを集めて武力闘争まで決行するようになる。常にクールで、よく通る朗々とした声には狂気さえ感じられ、同じく第5話で仲間たちに指示するシーンは相当な迫力だ。
お互い何かを守りながらも、考え方の相違から、やがて光太郎と信彦は対立する。戦いの中で2人が見せる絶叫、涙、怒り。そこに光太郎と信彦の悲しい人生が感じられ、本作の世界観さえそこにあるように思えるのは、やはり西島と中村の演技の力だろう。
「仮面ライダー」シリーズきっての名作は、著名な監督と2人の名優によって蘇り、より多くの人の心に響く作品となって帰ってきた。そう言い切っても何の問題もない1作だ。
文=堀慎二郎
放送情報【スカパー!】
仮面ライダーBLACK SUN
放送日時:2024年3月3日(日)22:00~
チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
詳しくはこちら