広告マンを演じる内野聖陽の魅力が全開の大作「ドラマW シリウスの道」

WOWOWの「ドラマW」シリーズは、2003年にスタートした同局のオリジナルドラマ。有料放送の強みを生かし、意欲的で良質な作品を数多く生み出してきた。小説を映像化した作品が多いことが特徴で、芥川賞や直木賞を受賞した人気作家の名作を初めて映像化した作品も多数あり、多くのファンに指示されている。

2008年に放送された「シリウスの道」もそんな作品のひとつで、広告代理店を舞台に繰り広げられる競合やプレゼンなど臨場感のあるプロの仕事ぶりを描いた企業サスペンスだ。原作は「テロリストのパラソル」で江戸川乱歩賞と直木賞を史上初のダブル受賞した、藤原伊織。「シリウスの道」は、2007年に惜しまれつつ逝去した藤原の集大成的な作品と言われ、かつて自身が働いていた広告代理店の内幕を背景に、一人の男の人生の軌跡を臨場感溢れる筆致で描き出した壮大なヒューマンサスペンスである。

主演には、内野聖陽がキャスティングされた。内野が演じる辰村祐介は、大手広告代理店・東邦広告の営業部副部長。彼には半沢明子(大塚寧々)と浜井勝哉(寺島進)という2人の幼馴染がいたが、3人の間には、明子と父親の関係、さらに父の死の真相に関する決して人には言えないある秘密があったのだ。秘密を共有しながら一切連絡を取ることなく成長した3人だったが、明子のもとに25年前の秘密をネタにした脅迫状が届いたことから、3人の運命が大きく動き出す。同じ頃、辰村の部署では予算18億円という大型プロジェクトの獲得を目指していた。辰村は、美貌の上司・立花英子(真矢みき)、独特の感性を持つ派遣社員・平野由佳(栗山千明)、一生懸命さだけは誰にも負けない若手社員・戸塚英明(黄川田将也)など、個性的なメンバーとともに、コンペの勝利に向け邁進する。だが、それを妬む社内の妨害や、ライバル会社との激しい争いが続いていく。やがて辰村は、大型プロジェクトが自らの過去の秘密と、ある一本の糸で繋がれていたことを知るのだった...。

幼馴染の秘密を巡る謎の脅迫者の出現、そして広告業界内の熾烈な争いが絡んだ大型のサスペンスという見ごたえ十分のストーリー。迷宮の果てに見えてくる人間の哀しい運命と未来への希望を描き出した本作は、ドラマWシリーズの歴史に残る傑作に仕上がった。演出を担当したのは、松本清張原作の「点と線」で本作の前年2007年の文化庁芸術祭大賞を受賞した巨匠・石橋冠。日本テレビ時代に「池中玄太80キロ」シリーズなどを手掛け、ヒューマンドラマはお手のものだが、松本清張作品の演出でも名を馳せたサスペンスの名手でもある。

そんな石橋の手腕が存分に発揮された本作は、主演の内野はじめ豪華キャストの出演でも話題を呼んだ。藤原伊織の小説は、主人公以外のわき役たちの個性が際立っている作品が多いが、本作の当時人物も総じて魅力的だ。特に明子を演じる大塚の醸し出すはかなさが印象深い。栗山もコンピューターの天才である破天荒派遣社員・平野を好演しており、存在感が抜群だ。真矢みきは才色兼備で有能な上司という、いかにも彼女らしい役どころで、大いにハマっている。また、寺島進をはじめ、田中健、本田博太郎、白竜、夏八木勲といった男臭いベテランたちが脇を固めていることも、本作の魅力を引き上げてくれた。

ただ、やはり特筆すべきは主演を務める内野聖陽だろう。文学座出身で若い頃から演技力には定評があったが、本作の前年にNHK大河ドラマ「風林火山」で主演の大役を果たし、名実共に実力派俳優として開花した印象があった。本作での辰村も企業戦士としてハードボイルドな雰囲気を醸して、実にカッコいい。原作小説のファンにも好意的に評価されたが、過去に「エースをねらえ」(テレビ朝日系)で宗方仁コーチを演じた際も、原作のイメージを完璧に再現した内野は高評価を得ていた。本作の後2009年に「JIN-仁-」(TBS系)で坂本龍馬を演じているが、完璧な土佐弁をマスターして高知県の人を驚かせている。そんな逸話が枚挙にいとまがないほど、内野は役作りに関して稀有なほど徹底している俳優と言えるだろう。

当時40歳だった内野が男性としても俳優としても魅力を全開させている大作ドラマ「シリウスの道」が、WOWOWプラスで放送される。キャスト、スタッフともに実力派が集結し、原作小説の良さを極力引き出し、壮大なスケールで描いたサスペンスは今見てもまったく色褪せない。

文=渡辺敏樹

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放送情報【スカパー!】

ドラマW シリウスの道
放送日時:4月13日(土)8:15~
放送チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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