深津は、ベリーショートの髪型にモノトーンのハイセンスな服で、頭脳明晰でクールに振る舞う栄田を演じている。しかし、実は熱い心を持った栄田。第3話で老いた母親に相続放棄をさせようとする子どもたちなど、依頼に正当性が感じられないときには、職務と己の正義感の間で揺れてしまう。そんな様を表情ひとつで説得力を持って演じられるのは、さすがだ。深津はこの演技で第28回ザテレビジョン・ドラマアカデミー賞助演女優賞を獲得している。受賞コメントでは、行政書士の専門用語が入った長セリフを「覚えるのも速くしゃべるのも大変でした」と語っている(「別冊ザテレビジョン『連ドラ10年史 ドラマアカデミー賞10年プレイバック』」より)。
そのコメントで「千春は演じたことのないタイプの役柄で難しかったです」と明かしたように、深津は繊細なアプローチで、「踊る捜査線」で演じた警察官・恩田すみれともまた違う、別人格の栄田を作り上げてみせた。栄田は生真面目さとプライドの高さを併せ持つが、ちょっと天然が入った田村につられて、歌ったり踊ったり大声を出したりもする。そんなコミカルな場面で見せるキレの良さにも注目だ。
原作は同名の青年漫画(田島隆・原作/東風孝広・作画/青木雄二・監修)で、漫画では田村も栄田も男性。その主人公2人を女性にしたという大胆なアレンジで、漫画では広島市の行政書士事務所を舞台に広島弁のセリフ満載で繰り広げられるところを、舞台も東京に変更している。ドラマで広島弁を話すのは所長の大野と、常盤貴子演じる田村からも時折、広島弁が出るという程度。当然、この実写化には賛否両論が巻き起こった。
ただ、純粋にドラマとして見ると、2010年代から数多く作られた女性同士のバディものの先駆けでもあったし、脚本の大森美香(「ランチの女王」「青天を衝け」)によるアレンジも上手く、よくできたシスターフッドの物語として楽しめる。
23年前の作品ということもあり、2024年の今となっては「不適切」なセリフもある。28歳の栄田と田村はチャンスがあれば、いい男を探し、自分をぐいぐいとアピール。また、女同士で言い争いになれば「そんなことだから結婚できないのよ!」と相手を罵倒する。この時代、アラサー女性はまだまだ不自由だったと思うか、当時の"結婚適齢期"を気にしながらも元気そうでいいなぁと思うか。見る人の年代によって、いろんな感想が生まれそうだ。
文=小田慶子
放送情報【スカパー!】
カバチタレ!
放送日時:2024年6月3日(月)12:10~
チャンネル:フジテレビTWO
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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