玄理演じるつぐみが、運命的に出会った男性と過ごした時間で感じたときめきを、輝くような笑顔を浮かべて話しているのを微笑みながら聞いていた芽衣子。「インテリアデザイナー」「青山にオフィス兼自宅を構えている」「小さい頃から引っ越しばかり」「2年くらい前に元カノの浮気で別れた」と、つぐみから聞かされる相手の男性の輪郭が明確になるに連れ、つぐみに注がれていた視線は宙を泳ぎ、表情も少しずつ固くなっていく。目の前のつぐみには悟られないほどの微妙な変化で、芽衣子の心の中に何かが芽生え、大きくなっていく様を、古川は一切声に影響を与えることなく、表情だけで見事に演じてみせた。
マンションに着いたつぐみがタクシーから降りた後、芽衣子は、運転手に今来た道を引き返させて、青山のとあるオフィスへ。そこにはつぐみが魔法のような時間を過ごした相手でもある、芽衣子の元カレ・和明がいた。ここから始まる中島とのヒリヒリとした会話劇では、古川は淡々とした口調ながら、芽衣子という人物の自由奔放さを遺憾なく表現。自分の感情に嘘がつけず、わがままで、和明を振り回しては傷つけてきた...。そんな2人のかつての関係が容易に想像できる鋭い言葉の数々で、和明の心を切り刻んでいく。だが、和明はもちろん、視聴者すらも芽衣子を憎むことができないのは、ガラス細工を思わせる古川の儚げな声と無邪気な子どものような存在感のなせる技といえるだろう。
つぐみ役の玄理、和明役の中島も、ナチュラルな演技で物語に圧倒的なリアリティを与えた本編。歪な三角形を描く彼らの関係に、芽衣子がどのような答えを出すのか。古川の卓越した演技に注目しながら、物語の結末を見届けてほしい。
文=中村実香
放送情報【スカパー!】
偶然と想像
放送日時:2024年6月23日(日)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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