名優・高倉健が「ゴルゴ13」という「ハマり役」で観客の想像を超えてみせたハイブリッドな演技

「ゴルゴ13」そのものを体現する高倉健
「ゴルゴ13」そのものを体現する高倉健

(C)東映

「ゴルゴ13」のデューク東郷と聞けば、真っ先に高倉が頭に浮かぶという人がほとんどではないかというくらい高倉がハマり役だと思うが、実際に観てみると「さすが高倉健...」と思わずうなってしまうほどに、期待感で上がり切ったハードルをやすやすと超えている。

依頼人と会うというゴルゴ13の登場シーンから、その存在感はビンビンと発せられ、ティアドロップの濃いサングラスをしていて表情は全く読めないにもかかわらず、つい表情を読み取ろうとしてしまうほどに視聴者の気を引くオーラを纏っている。それは、佇まい、歩き方、動き、座り方という動作から、口調やトーン、リズム、間というせりふ回しに至るまで、全てが緻密に計算された演技から生成されており、原作ファンを一瞬で納得させて「あのゴルゴ13が動いている!」という感動すら覚えさせてしまうほど。

無口であるため、せりふ以外での方法での表現になるのだが、観ていても無口な印象は受けない。それは、緻密な演技で雄弁に語っているからだ。そんな中で、極めつきは"背中で語る芝居"だろう。寡黙なキャラクターでもあるため、他者からの問いかけに「Yes」も「No」も言わず、ただ背中を見せるというようなシーンが多く見られるのだが、背中しか映っていないのにシーンごとに感情や思いが読み取れてしまう演技力は圧巻。漫画では「...」という表現ができるが、それを映像で体現できるという役者は稀有で、高倉の名優たるゆえんの一つに触れることができる。

また、高倉のキャリアという視点から見ると、数々の任侠ものを経て、名作「幸せの黄色いハンカチ」(1977年)との出合いを機に人情ものの作品が増えていった、その狭間の時期の作品であるため、任侠もので培った"凄味"と人情もので世間が知ることになる"話さずに雄弁に語る芝居"の、ハイブリッドな演技が楽しめる貴重な作品といえるだろう。

他の役者では演じられないハマり役で見せる、"凄味"と"話さずに雄弁に語る芝居"のハイブリッドな演技を楽しみつつ、名優が作品内で示した存在感を堪能してみてほしい。

文=原田健

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放送情報【スカパー!】

ゴルゴ13
放送日時:7月6日(土)19:00~
放送チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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