そんな祐太の生き別れた弟・祐介を永山瑛太が演じた。同じく複雑な生い立ちだが母を早くに亡くし親戚をたらい回しにされて育つ。貧乏でも笑いを武器にして、人からみじめに笑われながらも懸命に生きてきた祐介。家族のいない寂しさと孤独から誰も信じられずにいた彼は、なかなか売れない下積み時代を経て人気お笑い芸人となる。
塚本高史演じる設定上の兄であり相方の大介だけが、自分を唯一認めてくれた。彼に恩義を感じているからこそ、本当の兄・祐太を受け入れられずに「兄さん」と呼べず苦しんでいる。複雑な思いを抱きながらも健気に生きてきた青年を永山が好演。猿のような変な衣装や滑り倒した一発ギャグも厭わない振り切った演技を見せた。
また、竹内は今作のヒロインで、初代山ちゃん夫婦の一人娘・徹子に扮した。祐太とは兄妹のように育ってきたが、家出して長らく音信不通に。突然実家に帰ってくるも太めだった容姿はすっかり様変わりして、女神ような美しさを放つ。
ワケアリの過去があるものの、自己肯定感が低く涙脆い祐太に対し、気風の良い啖呵や本気の蹴りと男前な立ち居振る舞いが爽やかで魅力的だ。愛らしい笑顔はもちろん、怒った顔さえもチャーミングで、祐太と結婚して本当の家族となった彼女の強さと優しさがじんわりと心温かくしてくれる。
東京の下町を舞台にした、生き別れた兄弟の突然の再会劇。先の読めないパワフルなストーリー展開で彼らが巻き起こす騒動が描かれた。宮藤官九郎が"家族"という普遍的なテーマにチャレンジした本作。笑えて泣ける喜劇で、阿部らが演じた癖の強いキャラクターが生き生きと輝いている。
文=中川菜都美
放送情報【スカパー!】
なくもんか
放送日時:2024年7月13日(土)13:10~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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