心の奥の想いがスクリーンに滲む...河合優実の力量が十二分に味わえる映画初主演作「少女は卒業しない」

(C) 朝井リョウ/集英社・2023映画「少女は卒業しない」製作委員会

駿は昼休みにまなみと会う約束をして、嬉しそうに去ってゆく。しかし駿を見送るまなみは、なぜか怪訝そうな様子だ。一点をじっと見つめる表情の奥で、言葉にならないさまざまな想いが交錯しているように見える。

卒業式の予行演習の後、心の中にあるものを持て余すように屋上で佇んでいたり、駿との約束で調理室に行った時は、この場所と別れるのが信じられない、といった様子で部屋を見渡したり。まなみのシーンには、どことなく晴れない空気が流れている。まなみの心の深いところにある"何か"が滲み出ている、と言ってもいいだろう。

ではその"何か"とは?まなみが調理室で待っていると駿が来る。まなみの手作り弁当を2人で食べる、言うなれば秘密の会合だ。お弁当を渡したまなみが「喜んでくれるかな?」といった目線で駿を見たり、お互いにからかい合ったり、調理室での時間には初々しくて、温かな空気が流れている。

そんな時間を過ごした後に、駿が言う。「ずっとこのままがいいよな」。ケンカした彼氏とちゃんと話すと決めた由貴も、友人と一緒に自転車を走らせながら「なんでさ、卒業しなきゃいけないのかな」と言う。

友人がいて、彼氏がいて、通い慣れた校舎があった。だが卒業してしまえば、すべてとお別れしなければならない。調理室で幾度となく駿と時間を過ごしたまなみにも、そういった想いはあるだろう。だが、それだけではなかった。

卒業式の当日、ほかの3人と同じく、まなみも自分の想いを果たす。体育館に入場した時の、抑えようとしても溢れる想い。壇上に立ち、感情を抑える姿。まなみの胸にあるものが明らかになる瞬間は、涙なくしては見られない。ラストで答辞を読むまなみの姿も印象的だ。

本作の役作りについて、河合は「積み重ねて積み重ねていかないとできなかった」と語っている。確かに、冒頭からのどこか晴れない空気はまなみの経験をなぞってこそのものだし、ラストのシーンはそれを積み重ねてこその姿だった。

その想いと重みとを十二分に伝える河合の力量はさすがだし、巧みなシナリオ構成も見事というほかない。これからますます活躍するであろう女優・河合優実の演技力が堪能できる作品として、ぜひチェックしていただきたい1本だ。

文=堀慎二郎

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放送情報【スカパー!】

少女は卒業しない
放送日時:2024年7月1日(月)10:30~
チャンネル:WOWOW4K
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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