満島ひかりの「秘め」の演技が際立つ!見るたびに発見のある映画「ラストマイル」

(C)2024 映画『ラストマイル』製作委員会

だが物語が進むにつれて、会社の理念を皮肉るような一面や、意味深な表情や仕草も時折見せ、観客はエレナがどんな人物なのか徐々にわからなくなってくる。

掴めそうで掴めない人物像を表現する満島の演技によって、先の読めないストーリー展開がより深みを増して紡がれ、私たちは映画にぐっとのめり込んでいく。

思えば、2017年に放送された「カルテット」(TBS系)で満島が演じていた世吹すずめも、天才肌でありながらもズボラでマイペース、親しみやすいキャラクターかと思わせつつ、その正体や過去、さまざまな感情を秘めるような一面もあった。もっとも「カルテット」では主要な登場人物はみな何かしらの思惑を秘めていたが、すずめというキャラクターが特に裏表のなさそうな役どころだっただけに、視聴者は隠された一面に翻弄され、彼女に惹かれていったのだ。

このように満島が演じるキャラクターに、ある種翻弄されるような感覚を「ラストマイル」でも体感することとなるし、関東の流通を担うセンター長という"組織を背負った人間である"ということも、満島の「秘め」の演技に重厚さを加えている。

(C)2024 映画『ラストマイル』製作委員会

「ラストマイル」は運送業をテーマとしてはいるものの、日本における労働全般に対して、決して「こうするべき」「これはよくない」と教科書的に示すのではなく、ドキュメンタリーとも言えるほどただひたすらにリアルを描くことによる問題提起がなされている。「アンナチュラル」や「MIU404」も然りだが、塚原あゆ子監督・野木亜紀子脚本タッグで制作される作品の素晴らしさは、ただ物語の起承転結や事件のトリックを聞くだけでは得ることのできない、この社会に対する"捉え直し"の感覚のようなものを味わえるところにあると思う。

だからこそ、「ラストマイル」のストーリーの全貌や、エレナが一体どのような人物であったかについては、是非映画館で見届けていただきたい。そして一度鑑賞してストーリーを把握した上で、二度目、三度目と複数回見ることをおすすめする。ストーリーを理解した後だからこそ気付くことのできる満島の演技の繊細さに、改めて驚くことになるだろう。

文=HOMINIS編集部

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映画情報

『ラストマイル』
2024年8月23日(金)より、大ヒット公開中
©2024 映画『ラストマイル』製作委員会

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