南野陽子が女優の新たなステージに踏み出した気概と、それに応えた西田敏行の名演技に注目の映画「寒椿」

(C)東映

そんな貞子を主演の西田が引き立て、作品を悲恋だけではない分厚い人間ドラマとして昇華させている。西田演じる岩伍は、かつて任侠の世界にいたが大恋愛の末、きっぱりと足を洗ったという過去があり、物語はその愛する妻・喜和(藤真利子)が岩伍の女衒の仕事に馴染めず一人息子の健太郎を連れて家を出ており、岩伍が健太郎を連れ戻すところから始まるのだが、最初は父を嫌って反発して家出していた健太郎が、いつしか尊敬して慕うほどにカッコいい。

というのも、岩伍は他の女衒とは違って金銭ではなく芸妓のことを考えて動く男で、周りの人々からも信頼が厚く、いざとなればトラブルバスターとして頼られる人物。頭が切れて度胸もあり、トラブルも双方の角が立たないようにうまく解決するという万能さで、事を荒立てないためには自らの身を呈することもいとわない男らしさがあり、いざという時には腕っぷしも強い。

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そんな二枚目過ぎる岩伍を、西田はどこか陰のある男として演じており、背中で語る哀愁や葛藤、貞子の思いを受け止めてやれない忸怩たる思いなどを、表情や雰囲気で醸し出しており、ハードボイルドさまで纏わせている。最近だとモデルやアイドル出身の役者が演じるような役どころながら、西田はその演技力を駆使して、男女関係なく内面から惚れてしまう"いい男"として岩伍を表現することで、南野が表す貞子の岩伍への思いに説得力を与えているのだ。

女優の新しいステージに踏み出した南野の気概と、それに応えるかたちで支えた西田の名演技に注目していただきたい。

文=原田健

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放送情報【スカパー!】

寒椿
放送日時:12月6日(金)18:00~ 
放送チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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