映画「楽園」で魅せる杉咲花の「分からなくてもしょうがない」という現場に委ねる演技の破壊力!


例えば綾野剛演じる、どこに行っても自分の居場所がなく追い詰められていく青年・豪士と向き合っているときの紡の表情や心の動き。豪士の車に乗り二人で街に出かけるときの紡の心情は、疑心でもあり共感でもあり、信頼でもあり...とどんな解釈もできるくらいの揺れを感じさせ、ジリジリとしたドキュメンタリーを見ているような緊張感があった。

また紡に好意を持つ村上虹郎演じる野上広呂が東京にやってきたときの一連の対応も、どんな思いを抱いているのか簡単には推測できないほど、紡の表情には余白があり、視聴者に想像する余地を与えてくれている。

さらに柄本明演じる愛華の祖父・藤木五郎が「愛華だけ死んで、どうしてお前生きている?」と紡を理不尽に問い詰めたときの表情も、簡単に「こういう気持ちなんだろうな」と答えが出せないような複雑な心情を想像させている。

■杉咲花の演じていないような芝居

映画自体が、決定的な答えを提示しない作りになっているため、ややもすると難解な作品だと感じてしまうが、だからこそ俳優たちの演技が「どんな答えでも正解なんだ」と導いてくれることは作品にとって必要不可欠だ。その意味で、杉咲の演じていないような芝居は作品に奥行きをもたらしている。

2019年10月に劇場公開された本作。その後杉咲は、「市子」、「52ヘルツのクジラたち」、「朽ちないサクラ」など、映画作品に主演し難役に挑み、さらに俳優としての評価を上げている。映画だけではなく、「アンメット ある脳外科医の日記」、「海に眠るダイヤモンド」などの連続ドラマでも「どうしてこんなにもリアリティのある人物を演じられるんだ」と視聴者からもSNS等で驚きの声が多数あがるなど、「そこに居る」という説得力のある演技に脱帽している人が多かった。

杉咲はもちろん、綾野、佐藤浩市の怪演、柄本、片岡礼子らの生々しさなど、2時間10分のなかで繰り広げられる俳優たちのすごさが堪能できる作品だ。

文=磯部正和

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放送情報【スカパー!】

楽園
放送日時:2月17日(月)19:30~ほか
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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