
(C)松竹株式会社/株式会社衛星劇場
話を吾郎という人物に戻そう。というのもこのお話はほぼ吾郎が出ずっぱりのお話。つまりは中井貴一の芝居に映画の完成度合いの大きな比重がのしかかっているといえる。
そんな中井だが、作品の要として地に足のついた芝居をみせた。役柄こそパッとしないが、その優柔不断さ中途半端さをしっかりと演じていたのである。中でも印象的なのは偽装妻である白蘭と顔を合わせた2回のシーンであろう。

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驚くことに夫婦といっても、吾郎は白蘭と2回しか顔を合わせない。しかし、そこで視聴者に2人が惹かれ合っていることを印象付けなければラストシーンに全く繋がらない。中井はそんな大事な顔を合わせる場面で大げさな芝居はせずにリアリティのある表情をしている。それはまるで多くの人が身に覚えがあるであろう、気になるからこそのポーカーフェイスを観ているようで巧みだ。しかし、確かに白蘭と顔を合わせてからは普段の表情も物思いに耽っているようにみえる。吾郎という人物は先に述べたようにしがないチンピラで物語序盤でも喧嘩早かったり、酒に溺れたりと思索的には見えない。そんな人物が白蘭との出会いを通して考えているようにみえるのだ、中井の演技が巧みといえるだろう。
中井といえば今も第一線で活躍する実力派。是非、その芝居を本作で楽しんでほしい。
文=田中諒
放送情報【スカパー!】
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放送日時:2025年4月7日(月)12:00~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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