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「YOUNG MAN」「林檎殺人事件」など好感度抜群の西城秀樹が"笑わない殺し屋"に!「ザ・ヒットマン 血はバラの匂い」

俳優

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1991年6月に東映Vシネマとして製作された「ザ・ヒットマン 血はバラの匂い」。主人公の殺し屋を演じたのが西城秀樹だ。西城といえば、歌手として数々のヒット曲を世に送り出しているが、本作の2年前となる1979年に発売された「YOUNG MAN」は大ヒットし、爽やかかつ笑顔が素敵な"ヒデキ"として認知されていた。

■「YOUNG MAN」から2年、復讐に燃えるヒットマン役!

そんな西城が「ザ・ヒットマン 血はバラの匂い」は、恋人をヤクザの抗争によって失ってしまう元自衛官の男・高梨友一郎を演じ、次々とヤクザに復讐していく姿を見せている。本作が製作された1991年といえば、西城が36歳と大スターとして一世を風靡している時期だ。

しかし演じた高梨は、笑顔を一つ見せず、ヤクザを相手に復讐の炎を燃やす男。心が闇に覆われており、ほとんど感情を表に出すことなく、粛々と人を殺めていく。その中でも、さすがに色男だけあり、身を隠すために入ったソープランドでも、風俗嬢である世津子から一瞬にして気に入られ、匿われるなど、周囲の女性たち高梨のミステリアスな雰囲気の虜になっていく。

それでも高梨は顔色を変えずに、最愛の恋人を無残な死に追いやったヤクザたちをせん滅させることだけに命を燃やす。そのハードボイルドさと、「YOUNG MAN」の爽やかさ、樹木希林とのデュエットで大ヒットした「林檎殺人事件」(1978年)のコミカルさを兼ね備え、好感度の高いパブリックイメージを持つ"ヒデキ"とのギャップは、この作品の大きな魅力の一つと言えるだろう。

特にことを成し遂げたラストシーンで、オールバックの髪が乱れるなか、ただ一点を見つめ歩き、丹波哲郎演じるマル暴の刑事に両手を差し出し、逮捕を促すシーン、そしてそれを見逃がしてもらったときの虚無感いっぱいに立ち去る哀愁は、非常に味わい深い。陰の西城を存分に楽しめる。

■当時としては新しい「セクハラで訴えるわよ!」

西城の演技以外にも、いろいろと興味深いシーンが多い本作。まず高梨のバッグを盗んだことで出会った七瀬なつみ演じるルミが、「借金があったんだ」と盗みを働いた理由を述べると、高梨は「その可愛いお尻をおっ立てれば手っ取り早く稼げるだろう」と発言する。するとルミは「セクハラで訴えるわよ!」と言い返す。

この「セクハラ」という言葉は、1992年に「日本初のセクハラ裁判」として訴えた女性が勝訴したことで大きく報道されたが、本作がリリースされた1991年では、まだなじみのない言葉だ。ちょうどバブル期の終わりに差し掛かり、世の中か混とんとし始める生臭さと、こうした新しさが混在している不思議な世界観も本作の特徴的な部分だ。

さらに、前述した、高梨がヤクザの追っ手から逃れるために潜伏したソープランドで、迫ってくる風俗嬢の攻めを避けつつも、体が反応してしまうと、風俗嬢が「すごーい、感激だわ」と喜ぶ。西城と言えば、長年務めたハウスバーモンドカレーのCMで「ヒデキ、感激!」という決め台詞が思い出されるが、全編緊張感が漂う作風のなかで、このシーンににんまりとしたファンも多かったのではないだろうか。

本作には、当時映像作品に出始めた豊川悦司がワンシーンで登場したり、いまや名バイプレイヤーとして欠かせないでんでんが新宿署の課長役に扮したり、さらには丹波哲郎、中条きよしらが、西城の新たな一面を引き出す存在として、強い個性を発揮し作品を盛り上げるなど、さまざまな角度から作品を楽しむことができる。

文=磯部正和

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放送情報【スカパー!】

ザ・ヒットマン 血はバラの匂い
放送日時:4月2日(水) 19:00~
放送チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

詳しくは
こちら

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